【ニュース】
New technology will not necessarily replace old technology, but it will date it.
訳:新しい技術が古い技術にとってかわる必然性はない。ただ、古い技術がそのまま古くなるだけのことだ(Steve Jobs)
【解説】
グーグルが新しいインタラクティブなゲームのサービスを開始するというアナウンスは、任天堂やソニーといった、ゲーム機器を販売している企業に大きな衝撃を与えました。
今、世の中は、パソコン、あるいは手にとって移動できる iPhone のような端末と、インターネットで稼働するソフトウエアがあれば、ほとんど全ての情報や学習、そして娯楽が楽しめるようになろうとしています。これによって失われ、時代遅れになる機器やサービスが、これから先10年の間にどんどん増えてくるのではといわれています。
この現象を日本の将来に当てはめたとき、「ものづくり」という言葉に依存しすぎてきた日本人のおごりが日本の凋落の原因となるのではと危惧する人も多いはずです。
以前、日本の自動車業界を見舞うことになりそうなリスクについて触れたことがありました。そこでも解説したように、日本の多くの企業はいまだに組織という縦社会のピラミッドを大切にしすぎ、横のネットワークをグローバルに広げることに長けていないのです。もっといえばグローバルなサイズで人材を育成するノウハウに劣っているといえましょう。
そこで、今回は、そうしたノウハウを育成するために、海外のビジネスの現場ではどのような行動が求められているかをまとめてみたく思います。
全てのビジネスはそれが大きな組織であろうと、個人企業であろうと、「ひらめき」からはじまります。要はこのひらめきを組織がつぶさず、「ひらめき」を促進し、さらにそこから新たな機能のネットワークを構築することが必要なのです。
欧米流の発想では「ひらめき」のあとのプロセスはおおまかに言えば以下のようになります。
ひらめき(Inspiration) → プラン二ング(Planning) → ビジョンの創造(Vision) → イニシアチブ(Initiative) → ネットワーキング(Networking) → 説得と議論(Presentation and brainstorm) → チームワークの蘇生(Creating teams) → 目標設定(Goal setting) → 異なる意見や発想(Counter opinions and ideas) → 顧客のニーズの査定(Customer needs assessment) → 試行錯誤(Trial and Error) → 調整(Adjustment) → 最終目標(Final Goal setting) → 完成(Completion) → イノベーション(innovation) → 新たなひらめき(New Inspiration) → さらなるネットワーキング(New networking) → 成長(Business development)
一見日本も同様に思えるかもしれませんが、このプロセスの中に散りばめられた発想法をみてゆくと、そこにいかに異なるビジネス文化が潜んでいるかがわかってきます。
そして、物事は最初の「ひらめき」よる事業の開始で求められる完成で終わりません。完成のあと、常に完成品の刷新が求められます。そのとき、再び新たなひらめきによって開発がはじまるのです。
グループ志向で、組織の構造を重んずる日本と異なり、海外ではより個人のイニシアチブが評価されます。そして個人が組織の縦に対してではなく、横のネットワーク、時には組織を超えたネットワークを通じて戦略を進化させてゆくことが求められます。
組織が「ひらめき」を促し、個人がいかにそれをプレゼンし、チームの組成を促し、チームの中でブレンストームを重ねながら、「ひらめき」を具体的な計画に進化させてゆくかが大切です。
日本の組織に欠けているのは Individual Initiative 「個人のイニシアチブ」を奨励し、育てることです。日本ではとかく「出る杭は打たれる」といわれますが、グローバルな競争に晒されて生き残るためには、まず、この「ひらめき」をいかに育ててゆくかという価値観が大切なのです。
日本の社会では、自らの発想や意見を直裁に発言することを忌諱する風習があります。しかし、世界中の人が寄り添う環境では、遠慮することなく自らの気持ちを述べ提案する行動が必要です。その時にはassertive、つまり堂々と自信をもった対応をしなければなりません。上下関係や横の関係に気をつかって引っ込み思案になってはいけないのです。
そして、Inspiration、つまり「ひらめき」を組織としての目標というvision「ビジョン」に高め、そこで生まれるリスクを検証するために立ち止まるのではなく、リスクを冒しながら、失敗から学び、常に前に進む迅速さとしたたかさが求められます。そのためには、失敗したら責任をとらなければならいという発想自体を変えなければなりません。
現在のリーダーに求められるのは、この個人の「ひらめき」をみんながshare「共有」し、その「ひらめき」の向こうにある大きな「貢献」、そして「あるべき姿」をvision「ビジョン」として皆の心の中にいだけるよう、情報を共有してゆくファシリテーション力、ネットワーク力なのです。そして失敗を責めず、責任を追及することに終始せず、むしろ失敗を奨励し、そこから学べる環境を整えることなのです。
グローバルな環境では、様々な人が世界中から集まり共同作業を行います。このときに、お互いのdifference「違い」を尊重し、その様々な異なる発想や考え方が集合できるdiversity「多様性」を受け入れ、そうした環境を積極的に創造しなければネットワーキングは成り立ちません。常に日本ばかりに目を向け、他者を排除してはいけないのです。
ありとあらゆるビジネスにおいて、世界からプレイヤーが参入し、競争はますます激しくなってきています。
ここに挙げたグローバルでのビジネスの基本に加え、迅速にadvantage「有利な状況」を獲得し、他者より少しでも先により新しい製品やサービスを提供することが、我々に今求められています。ソニーや任天堂を見舞った衝撃は人ごとではありません。日本の産業界全体が取り組まなければならない喫緊の課題を突きつけられているのです。
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