2018年5月1日火曜日
アジアからみる「CulturalSynergy」とは
【ニュース】
Cultural differences provide opportunities for both synergy and dissynergy. The more the cultural styles of the companies differ, the grater the potential of cultural synergy, and the grater the potential for cultural conflict.
訳:異文化環境ではシナジー効果とその逆のリスクとが共存する。組織での文化が異なれば、その分相乗効果を生み出すケースも極めて大きくなるものの、一方で文化の違いによる衝突の危険も大きくなるというわけだ。(Wendy Hall著「Managing Cultures」より)
【解説】
20世紀終盤ごろから、IT革命の浸透によって世界はみるみる小さくなりました。それと同時にグローバライゼーションglobalizationという言葉が日常のように使われはじめたことは、記憶に新しいはずです。
では、そもそもグローバル化とはどのようなものなのでしょうか。
多くの人が勘違いしていることは、このglobalizationの波がIT革命の震源地だったアメリカからおこり、アメリカ型のビジネスの方法、コミュニケーションのノウハウが世界に浸透していったと思っていることです。
確かに、シリコンバレーなどではじまった新しい技術革新は世界を変えてゆきました。それが単に技術だけではなく、人々の常識や行動規範そのものにも影響を与えたことは事実でした。
そして、技術革新をより可能にするために、人材への投資や人材育成のノウハウがそうした企業の中で培われ、世界に輸出されたことも確かです。
しかし、アメリカ社会は、その当時アジアからの精神文化の影響を大きく受けていたことを忘れてはなりません。70年代後半以降、急激に増加したアジアからの移民が特に西海岸や東海岸の都市部のライフスタイルを大きく変えていったのです。当時のアメリカはベトナム戦争で躓き、その後の都市の荒廃といった社会問題の出口を見出せずにもがいていました。そのことで人々の中に、既存の欧米流価値観への信頼と自信への喪失感が蔓延していたのです。そこに浸透してきたアジアからの文化は彼らにとっては新鮮な驚きでした。特に仏教をはじめとする東洋哲学が一様に説くマテリアリズムへの鋭い批判に、彼らは大きな影響を受けたのです。
その結果、都市部でNew Ageと呼ばれる、既存の価値から離れ、瞑想や自然への回帰などを求めるライフスタイルが流行します。
これがアメリカにとってのグローバライゼーションのはじまりだったのです。
その世代の多くが高度成長を遂げた日本や、神秘的な宗教が混沌の中に共存するインドなどにわたり、アジアとの架け橋になってゆきました。
また、その世代がその後IT革命の第一世代へと進化していったことも忘れてはなりません。スティーブ・ジョブズなどはそれを代表する人物でした。
そして迎えたIT革命。それを担った人々の多くがアジアからの移民やその二世でした。彼らは、高度な教育を受けた技術者としてアメリカのIT産業を支えたのです。
このように、アメリカはアジアからの移民によって社会が変化しました。そして、アジアからの移民はアメリカの社会の仕組や価値観を吸収しながら、より高度なライフスタイルに挑戦します。それがIT革命の精神的なバックボーンになったのです。アメリカのみでも、アジアのみでも起こりえないグローバライゼーションの発熱効果がこうして産み出され、世界に影響を与えたのです。
Synergyという言葉があります。これは、異なる薬を調合し、より効果のある薬品ができあがることを意味した言葉でした。このSynergy効果を文化の融合の中に見出そうとしたのが、Cultural Synergyという発想です。
シリコンバレーでおきたように、世界中から人々が集まり、異なる発想法を融合させることでより高度な技術やノウハウを産み出そうという動きがその発想の原点だったのです。グローバライゼーションはこのCultural Synergyへの発想を抜きにしては語れないのです。
つまり、グローバル化はアメリカ化でも、欧米化でもないのです。70年代以降、それまで長年にわたって続いていた欧米からアジアへ向けた文化の流れが弱くなり、暗黒の植民地時代を克服したアジアからの新たな文化の輸出がはじまりました。その流れが欧米に影響を与え、Cultural Synergyという化学変化を起こしたことが、現在のグローバライゼーションのエネルギー源となったのです。
異文化環境でSynergyを生み出すには工夫が必要です。片方の価値観のみでは、それを押し付けられる側に抵抗を生み出します。それでも強引に変革を強要すれば、受け手の組織はいびつに変質します。
日本企業も含む、多くの世界企業が、それを克服できず、Synergyを生み出せずに苦しんでいます。
我々が今さらに考えたいのは、今後アジアの価値をIT社会、AIの社会の中でさらにどのように活用し、還元することで、次世代に向けたSynergyを創造できるのかということなのです。
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