2014年9月9日火曜日

ポスト冷戦の先に見えるものは

こころをつなぐ英会話メルマガ
今日の目次です。

1.ニュースなイングリッシュ
~ポスト冷戦の先に見えるものは~

2.Twitterえーわー!
二カ国語で同じ意味を同時tweet!

3.英語でどう語る?「日本の文化」
~おもてなしの精神~

4.山久瀬洋二お薦めの一冊
~日本人のこころ Heart & Soul of the Japanese~

では、始まりです。

 1. ニュースなイングリッシュ

海外のメディアで報じられたニュースを解説します。日本のマスコミではあまり報じられない切り口で、本当はどういう意味で報じられているのかを私見を交えてお伝えします。

今週のテーマは、

「ポスト冷戦の先に見えるものは」

です。


【海外ニュース】



NATO Plans a Special Force to Reassure Eastern Europe and Deter Russia

訳:NATOは東ヨーロッパを防衛し、ロシアにくさびをうつための特別な軍事行動を計画
(ニューヨークタイムズより)


【ニュース解説】

戦後の世界を二分していた冷戦が終わった契機は、地中海の島国マルタで当時のソ連のゴルバチョフ書記長とアメリカのジョージWブッシュ大統領との会談が終了した1989年12月3日でした。マルタ会談Malta Summitです。

冷戦終結の立役者ミカエル・ゴルバチョフは、西側諸国では高く評価されます。

しかし、ロシアでのゴルバチョフの評価はそれとは逆で、ロシアの弱体化をもたらした人物として、人気は全くふるいません。

それと対照的なのが、その後の混乱期を克服し、ロシアを強国として復活させた現在の大統領ウラジーミル・プーチンなのです。

彼の独裁者的な政治手腕に批判的な人は多くいるものの、庶民レベルでいうならば、強いロシアを再現させたプーチンの人気は根強いものです。

我々は、ロシアのウクライナへの介入、そしてクリミア半島の併合などをみるとき、そんなロシアの脅威にNATOがさらされているだけではなく、弱体化したアメリカ外交のもたらす危機であると分析します。

ではロシア側からみるとどうでしょうか。

英語にin a person’s shoeという熟語があります。つまり「その人の靴をはく」ということから相手の立場にたってみるということを意味する熟語です。

つまり、ロシアの靴をはいてみると、マルタ会談以降のロシアの焦りが、今反動となってウクライナに押し寄せていることがよくわかります。

マルタ会談以前の冷戦期、ソ連は東ヨーロッパ全域を自らの勢力圏におき、NATOに対してワルシャワ条約機構 Warsaw Treaty Organization という軍事同盟の盟主として君臨していたのです。

ソ連の崩壊とともに、そうした鉄のカーテンによる安全保障は崩壊し、今NATO加盟国がロシアと国境を接するようになりました。

そしてウクライナも今や西側に取り込まれようとしています。

アメリカの求心力の低下という図式でみれば、西側諸国の焦りはよく理解できます。

しかしマルタ会談以降、ロシアは正に権益を失い続け、彼らからみればソ連時代とは比較にならないほど、自らが西側の軍事力の前にさらされていると思っているはずです。

こうした視点に立って、ウクライナ問題をみるとき、プーチンの政治力以上に、ロシア国内にあるソ連時代へのノスタルジックなナショナリズムが、プーチンを後押ししている現状がよくわかります。

今度は、NATOの靴をはいてみましょう。すると二つの危機がみえてきます。

一つが、ウクライナ問題でのロシアの強攻策。そしてもう一つは西欧社会に露骨にチャレンジしてくるシリアとイラクでのISISの勃興です。

The combination of crises - one on NATO’s borders with a resurgent Russia and the other involving a possible new terrorism threat from radical Islam - represents the first major challenge to NATO in a quarter of a century.
(危機のコンビネーション。一つはNATOに接するロシアの復活。そしてもう一つはイスラム過激派組織からくる新たなテロの脅威。これらはNATOがこの四半世紀で経験したことのない重大な脅威なのだ。)

と同紙も解説しています。

つまり、ロシアとアメリカ、そしてNATOは、双方とも自らの抱く焦りに押され、ウクライナの地で相撲をとっていることになります。

今回締結された、ウクライナと新ロシア派の停戦も、実は妥協による合意ではなく、この相撲の膠着状態が産み出した停戦といっても過言ではないのです。

From Yalta to Maltaという言葉があります。それは、第二次世界大戦後の世界の秩序を話し合ったヤルタ会談と、それによってできあがった冷戦が終結したマルタ会談との間を一つの時代として括る表現です。

そしてマルタ会談以降を我々はポスト冷戦と呼んでいます。

クリントン政権期のアメリカの繁栄の一方で、ソ連崩壊による旧ソ連域内やその周辺国におきた混乱。

それに加えて中東問題の混迷に象徴されるテロの台頭。

こうしたマルタ以降のポスト冷戦の世界が、さらに一皮むけてロシアの復活、中国の伸長などによる新しい秩序への模索期にはいりつつあること、つまり既に我々はポスト冷戦期を離脱しつつあることを意識して現代の国際政治を見詰めると、このように色々なことがあぶり出されてくるのです。

その秩序が、安定したものか、さらに不安定は混乱への幕開けなのか。

ウクライナ問題、中東問題だけではありません。我々極東での隣国同士の緊張も加えた様々な不安定要因は、こうした「ポスト冷戦」以降の新たな秩序へのうねりに翻弄される結果発症している現象であるという点で、見事に一致しています。

これからは、今まで以上に、地域での混乱を各論としてではなく、世界の変化に共通した現象であるという視点で捉えてゆかなければならないのです。


バックナンバー(山久瀬洋二ブログ)

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 2.Twitterえーわー!

毎日、英語と日本語で同じことをつぶやいてます。
間違いやすい英話や異文化コミュケーションのコツをお伝えしています。
中でもリツイートやお気に入りの多かったtweetをご紹介します。

【英語tweet】

Japanese tend to require perfection from the beginning of the project.
Therefore, it takes a long time to make a decision to move ahead.

【日本語tweet】

日本人はものごとの入り口で完璧を求め、決裁に時間をかけすぎます。
よって、まず合意して進めながら調整してプロジェクトを完成に導く海外の常識と噛み合わず、日本だけが疎外されることが多くあります。
もし状況が変わればプロジェクト自体のゴール設定も変わる柔軟な姿勢にもついていけないのです。


山久瀬洋二twitter はこちら

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 3.英語でどう語る?「日本の文化」

今回のテーマは、

「おもてなしの精神」

です。

この言葉を英語で説明?

意外と難しいかも。

というのも、ただ日本は「おもてなしの国」などといえば、

「なにいってるの。どこの国だって外から来た人をもてなそうとするぜ。うぬぼれんなよ!」

ということになってしまうから。

じゃあ、一般的に、人をもてなすことって、どう説明する?

人を「もてなす」というときのキーワードはentertainだよね。

または、「おもてなし」という名詞を直訳する場合、hospitalityという言葉があてはまる。だから単に「おもてなし」を英語でいうときは、こうした単語を使えば問題は解決。

でも「精神」という言葉をいれて説明しようとするとそうはいかない。

日本人的にみたとき、「おもてなしの精神」とは、心がこもっていないとだめだから、例えば、

Omotenashi means to treat or entertain someone sincerely and warmheartedly.

とすれば、結構いけるんじゃないだろうか。

Sincerely とは「心から」という意味だし、warmheartedly とは文字通り「暖かい気持ちで」というわけ。

で、この時に、日本独特の「おもてなしの精神」を説明する前に、是非やっておきたいことがある。

それは、「あなたの国ではどんなおもてなしをする?」と質問をしてみること。

そして、それを参考に、日本の「おもてなし」の事例などを説明すれば、よりフェアに日本の「おもてなし文化」を説明できるはず。

例えば、オフィスに訪ねてきた人に、ただお茶を出すことは「おもてなし」ではあっても、「おもてなしの精神」とまではいかないね。

欧米では、オフィスに来た人に、Do you want something to drink? と聞いて、水かお茶かコーヒーなど選択してもらうけど、これは日本にはない「おもてなし」。

こうした事例を聞き出した上で、日本流の「おもてなしの精神」を説明するといいのでは。

例えば、

At the core of omotenashi is attentiveness to the needs of others.

といえばどうだろう。

attentiveness とは「思いやり」という意味の言葉。覚えておくと便利だよ。

つまり、「おもてなしの精神」の本質は、他人へのおもいやりにありという論法で、進めようというわけ。

そこで attentiveness の意味するところを更に説明してみよう。

To be attentive means to read the atmosphere, sense the mood, and feel the invisible energy pervading an occasion.

ではどうだろうか。

ちなみにpervadeとは「充満する」という意味だから、invisible energy pervading an occasion とは、「その折々に充満する目に見えない雰囲気」ということになる。

日本ではこのように、空気を読んで相手の身になっておもてなしができたら理想だと思っていて、それが「おもてなしの精神」なんだと説明するのも一案かな。

日本の文化をうまく説明することは、意外と大変。でも楽しく考えてみよう。これが異文化でのコミュニケーションの面白さなのだから。

では、こうしことを加味して、「おもてなしの精神」を英語で説明してみよう。構文は簡単。わからない単語があれば、辞書をひいても構わないよ。

Omotenashi means to treat or entertain someone sincerely and warmheartedly, whether that person be a visiting guest, a business contact, or a friend or acquaintance.
At the core of omotenashi is attentiveness to the needs of others.
To be attentive means to read the atmosphere, sense the mood, and feel the invisible energy pervading an occasion.
Ultimately, or ideally, it means not to entertain the guest to achieve some kind of self-satisfaction, but to be quick in perceiving the guest’s needs, desires, and the overall mood, and to entertain the guest accordingly.

次回は「気配り」。「おもてなし」と深い関係があるよね。

では

Have a nice day!!

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 4.山久瀬洋二お薦めの一冊

今週のお薦めは、

「日本人のこころ Heart & Soul of the Japanese」

です。

「おもてなし」「武士道」「わび・さび」「幽玄」「本音と建前」など、古から現代にまで受け継がれてきた日本人の感性を表す76のキーワードを簡潔明瞭な英語で説明。

日本人の価値観を海外の人に深く理解してもらうために、しっかりと読み込みたい1冊です。

大きな活字とページ下部に難解単語の語注つきで、多読初心者やシニアにも読みやすい!

日本人のこころ
Heart & Soul of the Japanese
著者:山久瀬洋二
翻訳:マイケル・クーニー
価格:1,512円

中身はこんな感じです↓↓↓



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今回は、ここまでです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
今週の「心をつなぐ英会話メルマガ」如何でしたか?

皆様のご意見・ご感想、ご質問・ご批判、お待ちしています。

See you next week !
また、読んでくださいねー。
さよならー。

発行者 山久瀬洋二
公式ブログ http://yamakuseyoji.com/
ご意見・ご感想等、お待ちしてます。
Email yamakuseyoji@gmail.com

山久瀬洋二の執筆活動

・異文化摩擦を解消する英語ビジネスコミュニケーション術

・英語で聞く世界を変えた女性のことば

・日本人が誤解される100の言動

・英語で読むスティーブ・ジョブズ

・気がつけばバイリンガル 英語日和

他多数




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