では、始まりです。
海外のメディアで報じられたニュースを解説します。日本のマスコミではあまり報じられない切り口で、本当はどういう意味で報じられているのかを私見を交えてお伝えします。
今週のテーマは、
「アメリカの焦りと世界の混沌(その3)
~ガザの紛争が広げるイスラエルへの抗議、そして困惑~」
です。
【海外ニュース】
Man returns Holocaust medal in protest over Israel's bombing in Gaza
訳:ドイツでのホロコーストからユダヤ人を救ったことで受けた勲章を、イスラエルに返還。ガザ地区への空爆への抗議のため。
(The Seattle Timesより)
【ニュース解説】
この記事は、戦争中ユダヤ人の子供を2年間にわたってナチの目を盗み、オランダの村にかくまった Hank Zanoli(91歳)という人物が、後年イスラエルから受勲した勲章を、ガザへの空爆に抗議し、オランダのハーグのイスラエル大使館に返却したことを報じた記事のヘッドラインです。
もう一つの「アンネの日記」といっても過言でない救済者の失望による執念の抗議といえましょう。
ガザ空爆は、イスラエルよりの政策をとりがちなアメリカをも困惑させ、中東問題そのものへの対応に対する様々な議論を欧米社会に呼び起こしています。
中東問題は、パレスチナ問題 Israel-Palestinian conflict がその引き金であり、問題の中核です。
中東は元来オスマントルコの版図の一部でした。20世紀に弱体化したその領土でアラブ系による独立運動がおき、オスマントルコと対立していたイギリスはそれを支持。
あのピーター・オトゥール Peter O'Toole が主演し、映画にもなった「アラビアのロレンス」Lawrence of Arabia の背景がそれにあたります。
一方、イギリスは、ロシアや後年のドイツなどでの迫害を逃れ、聖地エルサレムを中心とした地域に大量に入植してきたユダヤ系の人々へも支援を確約し、ユダヤ系資本との連携によって、世界大戦を乗り切ろうとしました。
二つの世界大戦の後、ユダヤ系の人々がイスラエルを建国。そこに住むアラブ系の人々と激しく対立します。その過程で、イスラエルとパレスチナとは分割され、イスラエル領内にいた多くのアラブ系の人々がユダヤ系の迫害をおそれ難民となりました。
パレスチナ難民 Palestinian refugees です。
現在紛争がおきているガザ地区 The Gaza Strip は、そんな分割されたパレスチナの一部なのです。
当時の様子を知りたければ、自らもパレスチナ難民としてイスラエルとペンで戦ったガッサーン・カナファーニ Ghassan Fayis Kanafani の小説「ハイファに戻って」を読むことをお勧めします。
カナファーニ自身レバノンで1972年に、車に仕掛けられた爆弾の犠牲になっています。
やがて、中東問題は、パレスチナを核に、各地での民族運動と呼応しながらアラブ世界全体へ拡大し、国際政治とも絡み合いながら複雑化していったのです。
8月前半、私はアメリカの西海岸に出張し、ビジネスパートナーでもある人物の一家と食事をしました。
彼の妻は1963年のクーデターで祖国に帰れなくなり、アメリカに亡命したイラクの国連大使の娘です。
彼らの交友関係をみてゆくと、アメリカ西海岸に長年の中東問題の結果移住してきた様々な人々の模様があぶり出されてきます。
その広範で複雑な移民の絵図面が目の前に浮かび上がってきたとき、20世紀そのものがアメリカに移住したのでは思うほどのショックをおぼえます。
中東は、イスラム教徒各宗派だけではなく、キリスト教各派、ユダヤ教の人々などが古来混在し、民族もアラブ系やユダヤ系の他にもクルド人、アルメニア系、ペルシャ系など複雑です。
その友人のオフィスの側のデリカテッセン delicatessen(サンドイッチなどをだすレストラン)のオーナーは、イランにルーツのあるユダヤ系の人で、イラン革命のあとアメリカに亡命しました。
また、その友人の関係者で、私ともよく一緒に仕事をする人物は、レバノンからアメリカに移住して来たイスラム教徒です。実は、彼らはアメリカの移民社会を牽引するパワーの一つでもあるのです。
8月14日、私はシアトルにいました。
マイクロソフトのオフィスで、私と3時間に渡って打ち合わせていた人物は、紅海に面したアフリカはエリトリア Eritrea から移民してきた人物で、熱心なスンニ派イスラム教徒。
同時に、最先端のハイテクカンパニーでマネージジメントに関するコンサルタントとして活動するアメリカ国籍の人物です。
その彼は、私との打ち合わせの最中に15分間休憩をとり、ビルの窓辺からメッカにむかって日に5回のお祈りの午後の義務を果たしていました。
「中東について、イスラム教についてのイメージダウンは、ステレオタイプを好むメディアの責任。多くの人々はアメリカで働く真面目な市民だよ。」
彼はこう語ります。
「20年もすれば、この国では白人系よりも、我々中東やアフリカ、そしてアジア系をも含む有色人種の人口の方が多くなる。アメリカ社会の転換期。それが旧来の“強くあるべきアメリカ外交”からの転換にも影響していると思うね。」
実際、マイクロソフトの敷地を歩く人々は、多くがインドやアジア、中東の出身者。
世界が揺れるとアメリカに移民が来る。移民が来れば、新しい血が流れ込み、常に社会が発展し豊かになり、国の有り様も進化するというわけです。
アメリカ外交の転換期におきている中東問題。そしてその象徴たるガザでの紛争。しかし、それをアメリカに住む移民の関連という視点でみるとき、日本では想像もできない、全く異なる国際政治の断面図がみえてくるのです。
バックナンバー(山久瀬洋二ブログ)
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毎日、英語と日本語で同じことをつぶやいてます。
間違いやすい英話や異文化コミュケーションのコツをお伝えしています。
中でもリツイートやお気に入りの多かったtweetをご紹介します。
【英語tweet】
Many people are still chasing the high score at TOEIC as Japanese corporations are encouraging to do so. This is a ridiculous strategy.
【日本語tweet】
英語力ではない、英語でのコミュニケーション力こそが必要と、何度も強調してきました。いまだにTOEICの点数アップだけに注力している企業が多くあります。これは時間とエネルギー、お金の無駄なのです。受験のノウハウを身につけることの好きな、大学受験に洗脳された日本人の悪い癖です。
山久瀬洋二twitter はこちら
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今週のお薦めは、
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今回は、ここまでです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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また、読んでくださいねー。
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