2018年2月6日火曜日
名言格言に見る英語圏のビジネス文化とは
【ニュース】
Fight fair, but avoid fair fights.
訳:フェアに戦え、でも相手と互角には戦うな
【解説】
アメリカ人のビジネスマインドを知る上で、あるビジネススクールの教授が言ったこの一言は参考になります。
Fairであること。それは法律を守り、相手を騙したり、陥れたりする策謀を弄せず、正々堂々であれということを意味します。
しかし、avoid fair fightsつまりフェアな戦いを避けろという言葉が後半に書かれていることが気になります。
前半の文章と後半とが矛盾しているように見えるだけでなく、後半ではフェアであることを否定しているように思えるからです。
アメリカ人には、握手をするときしっかりと相手の目をみて、握力をもって相手の手をグリップする人が多くいます。
手の中に武器を隠していないという証明でもある握手。それをちゃんと握力をもって行うことが、相手とフェアに仕事をすることを暗黙に伝えるメッセージになっているわけです。
しかし、握手をした相手とビジネスをすること、それはボクシングでいえばリングの上での戦いに臨むことを意味します。
リング上での戦いでは、正々堂々と戦うことと、うまく戦うこととを両立させなければなりません。反則をせず、ドーピングをしたり相手の体への不正なアタックをしたりすることはフェアではありません。しかし、同時にリングの上ではしたたかに闘わなければならないというわけです。この文章の後半で語っているのは、そのことなのです。
対戦相手をうまく心理的に追い込んだり、威圧をしたり、またあえて激しく打ち返さず、相手が疲れるのを待って執拗に攻撃したりといった戦略は、リングの上ではなんら問題はないわけです。
このメンタリティが、ビジネスをする上でも応用されるというのが、この格言の意味するところなのです。
法的にも、財務的にも、戦略的にもしっかりとアドバンテッジをとるようにしながらビジネスを進めることは、別に悪いことではないというわけです。
この対応を日本人は「したたか」と思い、時には嫌悪します。
ビジネス文化の違いによるこうした対応を受けると、日本人は相手に対して警戒心をいだいてしまうのです。
一歩日本を離れると、我々は様々な異なったビジネス文化に接します。
例えば、日本人はミスを嫌います。しっかりと準備して練習を重ねた上で、ビジネスというリングにあがろうとします。
If you don’t make mistakes, you aren’t really trying(もしミスをしないのならそれは真剣に物事に取り組んでいない証拠なのだ)という言葉を紹介しましょう。これは、コールマン・ホーキンスという有名なジャズミュージシャンの一言です。
この言葉はビジネスでもよく引用されています。つまり、人はミスを繰り返しながら成長するものだという彼の言葉と同様の格言が、ビジネス界でもよくみられるのです。
確かに、アメリカ人はミスは仕方がないと思い、その原因追求にやっきになるよりは、むしろそれを踏み台にして未来に向かおうというスタンスをとります。
それに対して、日本人はミスに対して徹底的な調査を求め、責任の所在を追求します。意識がミスをおこした背景、つまり過去の検証にむけられるのです。
確かに、日本人は本番になってミスがないように、まず充分すぎる準備と意識共有を図ろうとします。しかし、しっかりと準備をして前に進もうとする日本型のビジネスマインドに対して、アメリカ人はTo improve is to change, to be perfect is to change often.(改善してゆくということは変化を受け入れること。そして、完璧であるということは変更を頻繁に行うこと)と反論します。
まずは行動だと彼らは思うのです。そして変化を繰り返し、試行錯誤を重ねながらビジネスを進めようとするわけです。
実はこの名言は、アメリカ人のものではありません。イギリスの首相として第二次世界大戦をリードしたウインストン・チャーチルの一言です。しかし、これはアメリカ人にとても好まれる一言です。
こうした彼らの発想に対して、日本人は「それはちょっと無責任だ」と反論するかもしれません。
予定を変えたり、状況の変化に応じて対応を変えたりすることに躊躇しない欧米の人が、それでいて自らの立場を守るときは豹変し、contract is contract(契約は契約だ)といってアドバンテッジをとろうとします。
このメンタリティに対応しながら、どのように相手とWin-Loseではなく、Win-Winの戦いに持ち込めるかが、海外でビジネスをする上で求められる交渉力なのです。
それには、日本人が日本人のみと相撲をとっていてはだめなのです。日本にも積極的に異なる発想や常識をもつ海外の人を受け入れ、海外の人との業務経験を蓄積する必要があります。同時に、海外にもどんどん自らをさらけ出し、失敗の中からノウハウを磨いてゆく気概が求められるのです。
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