2015年8月25日火曜日

世界の安全と日本の安全神話の矛盾とは

こころをつなぐ英会話メルマガ

今日の目次です。

1.ニュースなイングリッシュ
~世界の安全と日本の安全神話の矛盾とは~

2.Twitterえーわー!
二カ国語で同じ意味を同時tweet!

3.山久瀬洋二お薦めの一冊
~世界遺産ベスト38~

では、始まりです。

 1. ニュースなイングリッシュ

海外のメディアで報じられたニュースを解説します。日本のマスコミではあまり報じられない切り口で、本当はどういう意味で報じられているのかを私見を交えてお伝えします。

今週のテーマは、

「世界の安全と日本の安全神話の矛盾とは」

です。


【海外ニュース】



They had a 'pretty good go at him': Quick-thinking heroes tackle train gunman

訳:彼らはとてもうまく相手に向かっていった。勇敢にも彼らは即断し、列車内で銃撃をしようとした男にタックルした (CNNより)


【ニュース解説】

8月22日、アムステルダムからパリに向かった高速鉄道で、あわや大惨事になるテロ事件が即座に制圧されました。

たまたま乗り合わせたイギリス人とアメリカの軍人が自動小銃を持って列車の乗客を襲おうとした人物にタックルし、押さえ込んだのです。

発砲はされたものの、この勇敢な行為で、惨事を防ぐことができたのです。

しかし、この事件は勇猛果敢にテロリストに立ち向かった人物への賞賛と共に、今世界がどれだけ深刻なテロの脅威に晒されているかを改めて見せつけられたことになります。

フランスといえば、今年のはじめに風刺漫画を掲載する週刊誌を発行するシャルリーエブド社が襲撃されたことは記憶に新しいはずです。

このテロ行為の場合、テロリスト側もイスラム教を風刺したことへの報復という明解なメッセージを発信していました。

しかし、テロで一番怖いのは、今回のように列車や駅など、人の集まる所での暴挙です。

ほんの一週間前におきたタイのバンコクでの爆発事件なども、そうした行為の典型といえましょう。

私は、こうした事件に接するたびに日本の「安全神話」について、いつも疑問を持つのです。

日本人の心の中に、「海外のことは海外のことで、日本ではまさか」という気持ちが常にあるような気がしてならないからです。

つい先週まで私はインドに滞在していました。

インドは常にパキスタンと緊張関係にあり、インド政府がいうには、パキスタン政府がインドに向けたテロへの取り締まりに消極的と常に非難をしています。

そんな隣国同士の不和があるにせよ、インドでの警備の厳重さにはいつもびっくりします。

インドでは、2008年に、ムンバイを中心に約400人の死傷者を出した同時多発テロが発生しました。

特にそれ以降、軍隊と警察とが連携した警備があちこちで行われています。

殆どの公共施設には金属探知期が設置され、ホテルの出入りは車のボンネットなどを開けて警備員が不審物をチェックします。

空港を利用するときは、チケットや航空会社の発行した予定表などがなければ立ち入れません。

アメリカなどでも、ホテルでの警備は最近厳重になっているところが多く、さらに主要なオフィスビルでも必ず訪問の理由のみならず身分証明書の提示が求められます。

日本の場合、スローガンは多く掲げられます。

例えば、新幹線などではspecial alert(特別警戒)などと表示して「不審物があれば係員に」というようなアナウンスはよく聞きますが、では実際に不審物を持ち込めないかというと、正に無防備そのものです。

殆どの行政関係の公共施設をはじめ、海外でみるような警備を実感したことは殆どありません。

建前だけのスローガンをアナウンスしていれば責任を果たしているかのような安易さを感じるのは私だけでしょうか。

我々は、日本だけが安全という神話が前時代の遺物であることを、1995年にオウム真理教の地下鉄サリン事件がおきたときに、身をもって体験したはずです。

平和であることは有り難いことです。

ただ、安全にしろ、我々の生活や経済活動にしろ、日本だけが例外という時代は既に過去のものです。

Japan is different. とかJapan is unique.という日本人がともすれば頻繁に使うこうした表現は、むしろ海外を日本から差別する表現として、慎むべきです。

世界中それぞれが異なり、ユニークだからです。

そしてこと安全に関しては、むしろ世界共通の課題を日本も背負っているという認識を持つべきです。

アメリカにはじまり、インドや、フランス、そしてタイなどの事件を他人事として捉えない姿勢がまず求められているのです。


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 2.Twitterえーわー!

毎日、英語と日本語で同じことをつぶやいてます。
間違いやすい英話や異文化コミュケーションのコツをお伝えしています。
中でもリツイートやお気に入りの多かったtweetをご紹介します。

【英語tweet】

If you can’t get what your counterpart says in English, easiest way is just say, “What?” Don’t hesitate to cut the conversation promptly.

【日本語tweet】

相手が英語で喋りだし、その意味がわからないとき、どのように確認すればいいか戸惑う人が多くいます。最も簡単なのは、What? 「なんだって?」と一言間髪入れず問いかけることです。それも、わからないぞと思った瞬間に。もし言っていることがわかって、理由がわからないときはWhy?と一言。


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 3.山久瀬洋二お薦めの一冊

今週のお薦めは、

「世界遺産ベスト38
World Heritage Site Top 38」

です。

世界には人類が共有すべき宝が溢れている。世界160ヵ国、約980件登録されている世界遺産の中から、38ヶ所を選出。

歴史的に重要な意味を持つ遺跡、保全が求められる美しい自然景観、人類が犯した悲惨な出来事を戒める負の遺産など、多様なスポットを読みやすい英語で紹介。

読むと思わず旅がしたくなる、この多様な世界を覗いてみませんか?

世界遺産ベスト38
World Heritage Site Top 38
著者:ニーナ・ウェグナー
価格:1,080円

※ニーナ・ウェグナー(Nina Wegner)
東京生まれ。幼少期を日本で過ごした後、カリフォルニア州サンフランシスコへ移る。フリーランス・ライター/編集者。ニューヨークのシラキュース大学でジャーナリズムを専攻、現在は世界中をまわりながら、国際問題や課題について執筆/編集をしている。

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今回は、ここまでです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
今週の「心をつなぐ英会話メルマガ」如何でしたか?

皆様のご意見・ご感想、ご質問・ご批判、お待ちしています。

See you next week !
また、読んでくださいねー。
さよならー。

発行者 山久瀬洋二
公式ブログ http://yamakuseyoji.com/
ご意見・ご感想等、お待ちしてます。
Email yamakuseyoji@gmail.com

山久瀬洋二お薦めの書籍

・対訳 TOKYO CITY GUIDE 観光客をもてなす極上のスポット

・留学の真実

・日英対訳 アメリカ医療ハンドブック

・1日10分 超音読レッスン「世界の名スピーチ編」【CD付】

・日本の酒 SAKE【日英対訳】


2015年8月18日火曜日

ガンジーの国から、もう一つの8月15日を考えて

こころをつなぐ英会話メルマガ

今日の目次です。

1.ニュースなイングリッシュ
~ガンジーの国から、もう一つの8月15日を考えて~

2.Twitterえーわー!
二カ国語で同じ意味を同時tweet!

3.英語で一言
~For me という気持ちを理解しよう~

4.山久瀬洋二お薦めの一冊
~Jアプローチ 「4技能時代」を先取りする凄い英語学習法~

では、始まりです。

 1. ニュースなイングリッシュ

海外のメディアで報じられたニュースを解説します。日本のマスコミではあまり報じられない切り口で、本当はどういう意味で報じられているのかを私見を交えてお伝えします。

今週のテーマは、

「ガンジーの国から、もう一つの8月15日を考えて」

です。


【海外ニュース】



An eye for eye only ends up making the whole world blind.

訳:目には目をということでは、結局世界は盲目になってしまう
(ガンジーの名言より)


【ニュース解説】

8月のムンバイはモンスーンの最中。町に湿気がたまるとザーという音があちこちから響いてくる。

すると驟雨がはじまり、それがしばらく続き、町中の湿気が道路に、溝に、植え込みに、そしてアラビア海へと吸収される。思ったほどじめじめしてはいず、むしろ太陽が照りつけない分、過ごしやすい。

そんなムンバイ、そしてインドにも8月15日が訪れる。

日本の終戦記念日、アメリカでは V-J Day(Victory over Japan Day)、中国や韓国でも日本の侵略から解放された日として、色々なイベントがあることはよく知られている。

しかし、インドでの8月15日は少し違う。

インド人はこの日を Independence Day、つまり独立記念日として祝うのである。

デリーなどでは大幅に通行を規制して軍事パレードなどの式典が行われる。

では、日本とインドの8月15日がまったく無縁のものかというと、決してそうではない。

インドが独立したのは、1947年8月15日。日本の敗戦からちょうど2年目のことであった。

インドの宗主国であったイギリスは、日本に対しては戦勝国。あの大島渚の映画「戦場のメリークリスマス」Merry Christmas, Mr. Lawrence でも取り上げられたように、シンガポールやマレーア、そしてビルマなどで日本はイギリスと激しい戦闘を交えている。

ビルマやインドでは、日本軍によって現地での独立運動を利用した作戦が展開され、イギリスをかく乱していた。

ビルマの民主化運動の指導者アウンサン・スーチーの父親であるアウンサン将軍も、一時は日本へ協力しながら独立への道を模索した。

そんな日本を痛切に批判していた人がいる。

インド独立の父ガンジーである。ガンジーは、イギリスからインドを解放するときに、nonviolence(非暴力)での civil right movement(民権運動)を展開し、運動の戦略としては、イギリスの制度に対する不服従、すなわち non-cooperation movement を展開してゆく。

この暴力を排除するガンジーの姿勢は、日本の中国への侵略行為などを正当化し、アジアの独立と繁栄を求めようとした大東亜共栄圏のビジョンと鋭く対立したのであった。

彼は実際に、アジアのために戦うべき日本が中国という豊かな文化のある国家を侵略していることを批判し、弾劾している。

ガンジーの nonviolence, non-cooperation「非暴力、不服従」の活動は、後世の活動家に受け継がれ、例えばアメリカで黒人の公民権を求めて闘ったマルティン・ルーサー・キング牧師、南アフリカでの人種差別撤廃を成し遂げたネルソン・マンデラなどの活動へと繋がっていった。

インドの8月15日は、そうした活動が結実し、イギリスからインドが独立を勝ち得た日なのである。

インドの現在の外交上の課題は、独立にあたって分離したパキスタンとの不安定な関係である。

全ての宗教や民族が融合した国家を建設しようとしたガンジーの意志とは裏腹に、ヒンズー教徒とイスラム教徒の対立からイスラム教国としてパキスタンはインドから分離独立した。

そして、イスラム教に対して宥和政策をとろうとしたガンジーに不満を持つヒンズー教の過激派の凶弾に、ガンジー自身が倒れたのは、インド独立の翌年のことでした。

8月15日。日本では中国や韓国との戦争を巡るそれぞれの意識の対立を払拭できないまま、70年の記念日を迎えてしまう。

そして、インドでは隣国パキスタンとの緊張関係を拭えないまま、68年目の記念式典が行われた。

インドとパキスタンとの間は未だに旅客機での行き来もできないほど、常に緊張関係が続き、双方とも核兵器を所有し威嚇しあっているという国際的なリスクをはらんでいる。

ムンバイの鉄道の玄関口であるチャトラパティ・シヴァージ・ターミナル Chhatrapati Shivaji Terminus(旧称ビクトリア・ターミナル)。

そこは人種や宗教の坩堝 melting pot を象徴するかのように、インド全国、そしてムンバイ近郊の街々から様々な人々が流れ込む。そんなターミナル横の大通りをさらに北上すれば、大規模なイスラム人街が拡がっている。

ムンバイの人によれば、意見は二つに別れている。こうした様々な宗教を全て飲み込み宥和するインドのパワーと美しさを信ずる人。

そして、イスラム教とヒンズー教との分離を主張する人。前者と後者の対立は、インドとパキスタンとが緊張する度に、様々な政治的な発言を通して代弁される。

8月15日のインドは、そんなインドの成り立ちをもう一度国民全員が考える日でもある。

そして日本の8月15日はどうだろうか。

ガンジーの説いた、非暴力不服従、そして宗教や人種を超えた人の宥和。

このテーマは、憲法論議に揺れる日本を含めた我々地球全ての人々の課題となっている。

その視点に立って、来年のアメリカの大統領選挙、ヨーロッパや中東などでの様々な政治課題を見つめてみることも、これからは特に必要なのである。


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 2.Twitterえーわー!

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中でもリツイートやお気に入りの多かったtweetをご紹介します。

【英語tweet】

When Japanese meet at the elevator in abroad, they tend to ignore each other even they know the compatriots are beside. It’s odd & awkward.

【日本語tweet】

海外のホテルのエレベータで日本人同士が出会うと、お互い意識しつつも気まずく沈黙して無視。他の多くの国の人同士は、ニコリとして Hi と声を掛け合い Have a nice dayなどといって別れます。中には、Hi と声をかけられたことに気付かず沈黙の日本人も。異なる常識の思わぬ摩擦です 。


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 3.英語で一言

今回のテーマは、

「For me という気持ちを理解しよう」

です。

英語で人とコミュニケーションをするときは、自分が思っている以上に、はっきりと意見をいうべきだと今まで強調してきました。

確かに、英語圏の多くの国の人々には、日本流の行間の意味や阿吽の呼吸という考え方が通用しません。

逆に言葉で語られた意味が、そのまま相手へのメッセージとして捉えられるのです。

つまり、もし英語を使っていながら、日本流の間接的な表現や、曖昧なものの言い方に従って相手とコミュニケーションをした場合、あなたの本当の意図を理解してもらうことは困難です。

そしてむしろ相手に誤解を与えてしまうリスクの方が多くなります。

だから、自分の意見ははっきりいうに越したことはないのです。

そうした意味からも、For me, という表現で始まるセンテンスは、人と自分とを区別し、自らの意思をはっきりと伝える時にとても便利なのです。

例えば、

For me, I cannot agree with this proposal.
(私はこの提案には賛成できないね)

という風に使って、自分の意思を相手に伝えるのです。

この表現は、「他の人がどうであろうと、私は---です」という意味を含んでいます。

For me, I have already got enough.
(少なくとも私はもう充分にいただきました)

If you like it, please. For me, it is not my favorite.
(もしお好きならどうぞ。私にとっては、これは私の好物ではありません)

島国の中で同じ民族の中で交流してきた日本人は、こうした表現が苦手です。

しかし、様々な背景の人や人種が共存する他の社会では、このようにはっきりと表現をしない限り、相手に意図が通じないというわけです。

For me, ---というセンテンスは、むしろあなたという人格や個性をはっきりと相手に理解してもらい、「顔」の見える存在として海外の人と交流する上で、必要不可欠な一言といえます。

しかも、このようにしっかりと相手に意思を伝えることを、相手もむしろ望んでいるのだということを理解しておきましょう。

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 4.山久瀬洋二お薦めの一冊

今週のお薦めは、

「Jアプローチ『4技能時代』を先取りする凄い英語学習法」

です。

アメリカの超一流大学で採用されている最強メソッド『Jアプローチ』!

コーネル大学名誉教授のエレノア・ジョーデン博士によって考案された、この『Jアプローチ』は、現在、ハーバード、プリンストン、イエールをはじめ、世界ランキング上位20校のうち、半数以上の12校で採用されている、言語の効率的習得を徹底的に追及したメソッドです。

このメソッドはスピーキング中心主義で、スピーキング力の向上により、同時に他の3技能(リスニング・リーディング・ライティング)を、よりスムーズに習得することができます。

本書では、スピーキング力の強化により、4技能をバランス良く身につける方法を、詳細に解説しています。

世界標準の学習法で、英語力を飛躍的に向上させましょう!

Jアプローチ『4技能時代』を先取りする凄い英語学習法
著者:米原 幸大・晴山 陽一
価格:1,620円

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今回は、ここまでです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
今週の「心をつなぐ英会話メルマガ」如何でしたか?

皆様のご意見・ご感想、ご質問・ご批判、お待ちしています。

See you next week !
また、読んでくださいねー。
さよならー。

発行者 山久瀬洋二
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山久瀬洋二お薦めの書籍

・対訳 TOKYO CITY GUIDE 観光客をもてなす極上のスポット

・HEALING SPEECH ヒーリング・スピーチ

・留学の真実

・BUSHIDO The Soul of Japan 英文版武士道

・DISCOVERING KYOTO IN TEMPLES AND SHRINES 対訳 京都の寺社


2015年8月11日火曜日

日本と戦争責任:歴史上のコメントのトリックとプリズム

こころをつなぐ英会話メルマガ

今日の目次です。

1.ニュースなイングリッシュ
~日本と戦争責任:歴史上のコメントのトリックとプリズム~

2.Twitterえーわー!
二カ国語で同じ意味を同時tweet!

3.山久瀬洋二お薦めの一冊
~想い出のサダコ Memories of Sadako~

では、始まりです。

 1. ニュースなイングリッシュ

海外のメディアで報じられたニュースを解説します。日本のマスコミではあまり報じられない切り口で、本当はどういう意味で報じられているのかを私見を交えてお伝えします。

今週のテーマは、

「日本と戦争責任:歴史上のコメントのトリックとプリズム」

です。


【海外ニュース】



“Yes, sometimes violence does lead to good things. The Japanese bombing of Pearl Harbor led to many very good things. If you follow the trail, it led to kicking Europeans out of Asia - that saved tens of millions of lives in India alone.”

訳:そう。時には暴力が良い結果を産むこともある。日本の真珠湾攻撃が沢山の良い結果をもたらしている。この行為は、ヨーロッパをアジアから駆逐したという事実につながっている。このことでインドだけでも沢山の人の命が救われたはずだ。
(ノーム・チョムスキー氏 MITでの2003年講義より)


【ニュース解説】

世界的に有名な言語学者で哲学者のノーム・チョムスキーが2003年に行った講義の中でこのように述べていることに、びっくりする人は多いのではないでしょうか。

何故、社会主義者とまでいわれていたチョムスキーが日本の戦争行為を肯定するようなコメントをだしたのかと。

歴史には多くの皮肉があります。

例えば、19世紀に始まった欧米のアジアへの進出と植民地化は、アジア諸国で大きな抵抗を産む中で、日本も含め、アジアの近代化、民主化の原動力になりました。

そして、20世紀前半の日本のアジアでの侵略行為は、欧米植民地の秩序を破壊し、戦後多くの国々の独立へとつながりました。

フランスの植民地であったベトナムでの事例のように、旧日本軍の一部が戦後もベトナムに残留し、ベトナムの独立を支援したという史実も残っています。

旧日本軍が中国や朝鮮半島、そして東南アジアで展開した侵略行為が、皮肉にもその後の歴史に様々な影響を与えていたことも、また事実といえましょう。

これと同様に、反面教師的なことをいうならば、ユダヤ系の人々を大量に虐殺し、ヨーロッパ全域で殺戮行為を行ったナチスドイツの行為は、その後の先進国での人権へのアプローチを大きく変え、ヨーロッパの平和を産み出す原因となりました。

チョムスキーのコメントは、こうした背景によるものといえましょう。

我々が、そこで知っておかなければならないことは、「歴史上のコメントのトリックとプリズム」というテーマです。

人類は、歴史上様々な利害関係の中で文明を成長させてきました。

例えば、ある地域がある国家の植民地として圧政に苦しんでいたとします。

すると、植民地の人々はその国家を攻撃する他の国の動きを支援します。

その時、他の国の行為が歴史的に評価されているかどうかとは全く別の判断が植民地の人々によってなされることがあるのです。

実例としては、アメリカがイギリスから独立するとき、イギリスのライバルであったフランスの支援を確保します。

しかし、当のフランスはブルボン王朝という王室が君臨する、イギリスよりも民主化の遅れた国家でした。

アメリカの独立の英雄達は、圧政からの解放と「自由」をテーマに革命をおこします。

当時のフランスの国是とは相容れない筈の思想をもって行動を起こしたのですが、政策としては親フランスの姿勢を貫くのです。

もう一つの事例としてウクライナのケースを紹介しましょう。

ウクライナは伝統的にロシア(あるいはソ連)の影響下にあって、常に独立の機運がありました。

だからこそ、独立派の人々の中には、旧ソ連を侵略したナチスドイツに協力した人もいたのです。

そうした人々は、当時ナチスドイツよりのコメントを発表して、ソ連に対峙していたのです。

次にアジアに目を向けましょう。

インドでイギリスからの独立を指揮していたジャワハルラール・ネルーなどは、20世紀になって日本が西欧列強と比肩するまでに台頭してきたことを、胸を躍らせて観察していたときいています。

また、東京裁判で、ただ一人日本のA級戦犯を裁くことに消極的だったことで知られるインド出身の裁判官ラダ・ビノード・パールのコメントなども、インドの知識人の20世紀の複雑な国際関係を踏まえたコメントとしてそれを読み込むと、真価がみえてくるのです。

当然、西欧社会の中にも、19世紀から20世紀にかけての、いわゆる西欧列強の植民地主義や西欧偏重の文明観などに疑問をもっていた人々がいました。

彼らの中には、アジアの中で力を蓄えていた日本について、それを賞賛する気持ちがあったのも事実です。

しかし、日本の侵略行為でアジアの多くの国々が災禍を被った事実から目を反らすことはできません。

こうした一見異なる様々な評価が一つの歴史的教訓から生まれる背景に、歴史評価へのトリック。

そして「正」が「偽」となり、「偽」が「正」となるプリズム効果があるのです。

そのときの立場や、状況などによって、人々のコメントは様々に解釈され、利用されます。

それが、誤解を生むこともあれば、誤って利用されることもあるのです。

「歴史上のコメントのトリックとプリズム」とは、そうした人々のコメントの持つ背景の複雑さを意味しているのです。

日本人がそうしたコメントを読むときに、そのコメントをただ表面的に文字通りにとって判断すると、ここに記したトリックにひっかかり、誤解をしてしまうことがあります。

実は、現代の中国の社会主義体制を築いた毛沢東も、戦前の日本の中国での侵略行為について、肯定するかのようなコメントをしています。

これは、おそらく日中戦争を戦った毛沢東の皮肉であると共に、大きな目でみれば、阿片戦争以来、西欧列強の侵略に晒されていた中国が、日本という西欧をも敵にしている相手と戦ったことで、最終的に西欧社会の侵略行為をも克服できたということを言っているのでしょう。

最近話題になる歴史への正しい評価というテーマについて考えるとき、我々は単にインターネットで人の言葉や史実を検索したりするのではなく、こうしたコメントを語った人々の背景への冷静な視線を忘れてはならないのです。


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【英語tweet】

Challenging to the risk is lovely. Be persistent and trust your ability. I would say good luck and fingers crossed for you.

【日本語tweet】

誰かが何かに挑戦しているとき、英語ではGood luck!と激励しますが、加えてfingers crossed. といえばより相手への心からの思いをカジュアルに伝えられます。中指を人差し指に重ね、指で十字をきってお祈りをするかわいらしく、ちょっとしたもう一歩の気遣いの表現です。


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 3.山久瀬洋二お薦めの一冊

今週のお薦めは、

「想い出のサダコ Memories of Sadako」

です。

戦争の残虐性、そして生きることへの希望を心に刻む物語です。

広島の「原爆の子の像」には、世界中から平和を願って、千羽鶴が届けられています。

その「原爆の子の像」のモデル、佐々木禎子さんは2歳の時に広島で被爆し、12歳で白血病を発症。祈りをこめて折り鶴を折りながら短い生涯を閉じました。

同じ病室で闘病生活を送った大倉記代さんが、禎子さんとの思い出を綴った本書は、「短かった命の輝き」を感じながら、平和への思いを優しく柔らかに奮い立たせてくれます。

戦後70年。永遠に読み継がれてゆくべき名作を日英対訳で。

英文朗読オーディオCD付です。

想い出のサダコ Memories of Sadako
【日英対訳・英文朗読CD付】
著者:大倉記代
訳:宮本慶子
監訳:スティーブン・リーパー
挿絵:夜川けんたろう
価格:1,620円


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今回は、ここまでです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
今週の「心をつなぐ英会話メルマガ」如何でしたか?

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また、読んでくださいねー。
さよならー。

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山久瀬洋二お薦めの書籍

・対訳 TOKYO CITY GUIDE 観光客をもてなす極上のスポット

・留学の真実

・日英対訳 アメリカ医療ハンドブック

・1日10分 超音読レッスン「世界の名スピーチ編」【CD付】

・日本の酒 SAKE【日英対訳】


2015年8月4日火曜日

2016年  アメリカ大統領選挙の争点とは

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今日の目次です。

1.ニュースなイングリッシュ
~アメリカ大統領選挙の争点とは~

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~東京居酒屋ガイド~

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 1. ニュースなイングリッシュ

海外のメディアで報じられたニュースを解説します。日本のマスコミではあまり報じられない切り口で、本当はどういう意味で報じられているのかを私見を交えてお伝えします。

今週のテーマは、

「アメリカ大統領選挙の争点とは」

です。


【海外ニュース】



Vice President Joseph R. Biden Jr. and his associates have begun to actively explore a possible presidential campaign, which would upend the Democratic field and deliver a direct threat to Hillary Rodham Clinton.

訳:ジョセフ・バイデンと彼の関係者は、大統領選挙への出馬を積極的に検討。これは民主党の大統領選挙への大きな変化となり、ヒラリー・ロッダム・クリントンへの直接の脅威となるようだ(NY Timeより)


【ニュース解説】

来年のアメリカでの大統領選挙 a presidential election を巡っては、共和党 The Republicans ではメキシコ系移民の排除などを歯に衣着せず言明し、毒舌によって却って人気を集めている Donald Trump が、どちらかというと穏健派として知られる Jeb Bush を脅かすなど、その混戦模様が話題となっています。

そうした中で、民主党 The Democrats はといえば、圧倒的な人気を博す、Hillary Rodham Clinton がアメリカ発の女性大統領を目指して独走しているような印象を与えていました。

しかし、ここにきて、現職の副大統領の Joseph R. Biden Jr が立候補するのではという憶測が流れ、状況が一挙に混沌としてきたのです。

こうした状況の中、今回の大統領選挙の争点について考えてみましょう。

私は、今回の争点は一言、「本音と理性」との闘いなのではと思っています。

では、本音とは何を意味しているのでしょうか。

例えば、あなたがもし「白人の男性」、しかも中産階級に属しているとします。すると、あなたは仕事の上でも、日常生活ですら「平等」という概念に常に過敏に反応しなければならないという重圧を感じます。

つまり、元々社会的に優位な地位にあった白人であり、かつ男性であるあなたは、そうでない人種を差別していないことを常に行動で社会にアピールし、女性に対しても、気を遣って法に触れず、社会からも制裁を受けないように行動しなければならないというわけです。

移民社会であり、資本主義の本家を自負するアメリカは、人種差別をいかに排除し、平等で自由な社会を造ってゆくかという課題と常に取り組んできました。

ですから、少なくとも法律上、そして社会の表面では制度上もあらゆる人が人種や国籍、さらに性別や宗教的背景などによって人が差別されない仕組みが出来上がっています。

そのとき、元々差別していた側の白人男性はより、ちょっとした誤解から加害者となる可能性に晒されているという風に思っている人は結構多いのです。

一方現実の社会は混沌としています。

本音でいえば、経済格差の問題と、人種の問題とは常に深くリンクしていて、アフリカ系アメリカ人の居住区は低所得で犯罪率が高いと一般的には思われています。

そして、カリフォルニアなどでは、メキシコや中南米からの移民の流入が、新たな社会上の差別や不平等を産み出しているとされているのも事実です。

そんな格差社会と、建前だけの平等の原則にうんざりしている人が、今アメリカ社会の中に新しい保守層として台頭してきているのです。

彼らの多くは、表面上はごく普通の社会人です。

しかし、心の中ではそうした不満が鬱積し、時には人種偏見にも同情的です。ただ公にはそれを口にできないため、こっそりと Donald Trump のメキシコ系移民への強烈な批判といった過激な言動に同情するのです。

この本音の行動に対して、あくまでも社会が目指す理想をかなぐり捨てては元も子もなく、そんなことをすれば、世の中が再び暗黒時代へと逆戻りするという脅威を感じている人々が、Hillary Rodham Clinton を支持するリベラス層というわけです。

この本音と理想との対立は世界のあちこちでもおきています。

自分たちを迫害してきた者へ容赦なく鉄槌をというイスラム原理主義者の本音と、あくまでも多様性を支持し人権を重んじた社会を目指す理想。

経済的に行き詰まるギリシャなどを切り捨てて、ユーロを守るべきとする本音と、先の二つの戦争などによって分断されたヨーロッパを一つの共同体として成長させるべきとする理想など、そうした対立事例は様々な形で世界に拡散しています。

人類が、理想を目指さず、それぞれの本音のニーズだけで動き出す時、そこには戦争や迫害がついてまわることは、長い歴史が証明しています。

今回の大統領選挙は、そうした本音にどこまで妥協しながらも、アメリカがしたたかに理想を目指してゆけるのかというテーマに、国民が敏感に反応する選挙となるはずです。

すなわち、本音と理想との対立が、過去にないほど鮮明になっている現代社会を象徴する選挙になるのではないでしょうか。


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【英語tweet】

People need proper silence when they speak Japanese. People need proper swiftness to maintain conversation when they speak in English.

【日本語tweet】

「間」という日本独特の考え方。英語に訳せばSpaceですが、言葉と言葉との間の「間」が長いのが日本語の特徴。その長い沈黙には英語を話す人たちは戸惑います。でも、日本語では「間」がないと趣がなくなります。そして英語では、間髪入れずに言葉を交わせば、活き活きとしたリズムが産まれます。


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 3.山久瀬洋二お薦めの一冊

今週のお薦めは、

「【日英対訳】東京居酒屋ガイド A Guide to Japanese Pubs and Izakaya」

です。

食事がおいしく、お酒も飲めるという日本の居酒屋のような形態は世界的にも珍しく、外国人観光客にとっては日本独特の文化として大人気!

本書は居酒屋の定番メニューや、マナー・注文の方法、そして東京の人気55店を日英対訳・写真付で紹介します。

新宿ゴールデン街特集付き!

【日英対訳】東京居酒屋ガイド
A Guide to Japanese Pubs and Izakaya
著者:島本慶&スキップ
価格:1,836円


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今回は、ここまでです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
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皆様のご意見・ご感想、ご質問・ご批判、お待ちしています。

See you next week !
また、読んでくださいねー。
さよならー。

発行者 山久瀬洋二
公式ブログ http://yamakuseyoji.com/
ご意見・ご感想等、お待ちしてます。
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山久瀬洋二お薦めの書籍

・対訳 TOKYO CITY GUIDE 観光客をもてなす極上のスポット

・留学の真実

・日英対訳 アメリカ医療ハンドブック

・1日10分 超音読レッスン「世界の名スピーチ編」【CD付】

・日本の酒 SAKE【日英対訳】