2015年1月27日火曜日

アメリカ流平等社会を目指すオバマのスピーチ

こころをつなぐ英会話メルマガ
今日の目次です。

1.ニュースなイングリッシュ
~アメリカ流平等社会を目指すオバマのスピーチ~

2.Twitterえーわー!
二カ国語で同じ意味を同時tweet!

3.山久瀬洋二お薦めの一冊
~学校では教えてくれない海外生活単語帳~

では、始まりです。

 1. ニュースなイングリッシュ

海外のメディアで報じられたニュースを解説します。日本のマスコミではあまり報じられない切り口で、本当はどういう意味で報じられているのかを私見を交えてお伝えします。

今週のテーマは、

「アメリカ流平等社会を目指すオバマのスピーチ」

です。


【海外ニュース】



Let's close the loopholes that lead to inequality by allowing the top one percent to avoid paying taxes on their accumulated wealth. We can use that money to help more families pay for childcare and send their kids to college.

訳:不平等の元となる抜け道、人口の1パーセントを占める富裕層が税金を逃れ、富を蓄積できる抜け道を塞ぎ、その資金で家族が子供を養育でき、大学におくることができるようにしなければなりません。 (オバマ大統領の年頭教書State of the Union addressより)


【ニュース解説】

今日、シアトルからサンフランシスコに帰ってきました。

シアトルでは、仕事の後、あるプロジェクトのビジネスパートナーでもある友人の家に招かれ、昼食をともにしました。

彼は、外で会っているときは、ごく普通のビジネスマンです。いかにもアメリカらしいコンサルティング会社の社長で、色は浅黒く、目はくりっとして、とてもフレンドリーな人物です。

さて、彼の家に招待され昼食となりました。

彼の兄弟2人、それにパキスタン系の友人が同席し、私をいれて5人がテーブルを囲みます。食事を運んでくるのは次男、時々長男が手伝います。

料理は、彼らの故郷エリトリアの民族料理。エリトリアは1991年にエチオピアから独立したものの、紛争が絶えず、政情は安定していません。

そんな故郷からサウジアラビアに逃げ、さらにアメリカに移民してきた兄弟。

彼らは、移民当初から友人として付き合ってきた一家と同じイスラム教の繋がりで常に親しくしています。

その息子が今日来ているパキスタン系の人物です。

実は私の友人は、そのパキスタン系の人物の父親の知人を介してお見合いをし、結婚しました。写真を交換するのみで、結婚したとき初めて出会った相手です。

食事はスパイスがきいていてとても美味しく、造るのに一晩以上かかったということです。

最大限の歓迎に感謝です。

ただ、面白いことに、奥さんや娘さんといった女性は一人も私の前に顔を出しませんでした。

通常のアメリカの家庭に招かれたときとは全く異なる、イスラムの世界がそこにありました。

パキスタン人の友人も、さらに彼の兄弟の一人もマイクロソフトのエンジニア。

そして、彼自身国際企業のコンサルタントとして世界を駆け巡っています。

これが、私のみるアメリカ、さらには欧米社会にも普及しつつある多様な移民社会の内側です。

多くの移民が、それぞれの伝統を家庭に持ちながら、アメリカという共通の社会で、アメリカという平等を重んずる常識に従って生活しています。

「女性が家庭にいることは、こうした料理の味付けなどの伝統を守ってゆく上で欠かせない。もちろん、毎日メッカに向かって礼拝も欠かさないよ」

彼は、そう私に話してくれます。

ランチでの話題は、彼らにとって遠い国である日本についての質問。

そして、今週他界したアブドラ国王亡き後のサウジアラビアとアメリカとの関係についてなど。中東問題での興味深い情報も教えてもらいました。

彼らの子供達は、普通のアメリカの家族の家にいったとき、オープンに接してくる女性とも語り、男女平等が原則のアメリカ社会にとけ込んでいるはずです。

しかし、自分の家庭では、家庭としての伝統にしっかりと従っているのです。

これが移民社会の二重構造です。よく出れば多彩な文化が前向きに共存し、能力を競い合う、強靭な社会を造ります。

実際に、以前にも説明しましたが、シアトルに本社をおくマイクロソフトで働く技術者の殆どが、私の友人のような移民であり、その子供達です。

しかし、その歪みが偏見や孤立、そして差別へ、または世代間の対立へと傾斜したとき、イスラム国へのリクルートに応募したり、人種対立による暴動がおきたりということになるわけです。

オバマ大統領の年頭教書は、久しぶりに好感をもってアメリカ人に迎えられました。

回復基調の経済が彼の政権を後押ししているのです。

年頭教書でも、彼はアメリカ経済の復活を強調します。

そして、これからも世界をリードし、自由経済を守りながらも、「世界の警察官」の立場をおりて、外交力によって問題を解決し、同盟国に軍事や警備などの役割を移譲してゆく政策をアピールしていました。

そして、ヘッドラインのように、富裕層に課税し、中間所得層や低所得者への就学や医療、さらには生活全般への下支えを行うよう、予算を配分してゆくと言明しています。

強いアメリカの復活は、こうした多彩で複雑な移民社会にある貧富の問題、差別や偏見の問題をいかに解決してゆくかというテーマと合致しているのです。

私の友人の家庭での一幕が、アメリカ社会のあちこちにあって、色々な融和や化学反応をおこしながら、社会そのものに影響を与えているのです。

そして、その向こうに、オバマ大統領が指摘するような貧困や偏見が助長されてきたときに、今回まで特集してきた、人種対立などによる fundamentalism 高揚のリスクが潜んでいることを、ここに改めて強調したく思います。


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 2.Twitterえーわー!

毎日、英語と日本語で同じことをつぶやいてます。
間違いやすい英話や異文化コミュケーションのコツをお伝えしています。
中でもリツイートやお気に入りの多かったtweetをご紹介します。

【英語tweet】

Explaining your culture is not easy because sometimes it is too usual and common in daily life to teach others for them to understand it.

【日本語tweet】

京都の伏見稲荷で、なぜゲートの前に狐がいるのとアメリカの仕事上の友人が質問。狐は神様の使いで、稲穂を守ることから、富をもたらす使いだと説明。すると、稲荷神社は神道なのか。神道は仏教とどう違うのかとさらに質問。外国の人と観光地に行く場合、こうした質問に的確に答える準備が必要です。


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 3.山久瀬洋二お薦めの一冊

今週のお薦めは、

「学校では教えてくれない海外生活単語帳」

です。

日本の学校では教えてくれない、だけど知っていれば海外での生活で必ず役立つ単語を紹介します。

また、コミュニケーションの場面で相手に誤った印象を与えないように、本書ではことばの使い方や微妙なニュアンス、文化的な背景もしっかり解説しています。

『外国語を学んでいく中で一番おもしろいのは、言語を通じて人々の生活感覚や文化の違いが見えてくることだと思います。

たとえば、日本では幼稚園児でもカナブンとカブトムシの違いくらいは知っていますが、英語ではどちらも beetle です。

逆に英語で明確に区別される square と rectangular は日本語ではいずれも四角といえます。

また、英語圏でよく使う resource や utility のように、日本語には同じ範囲をカバーする訳語がないので、訳すたびに四苦八苦しなければならない英単語や、「軽自動車」のように英語に対訳語が存在しない日本語もあります。

英語が使われている社会で生活していると、そうした違いが生まれた理由について「なるほど」と思うことがよくあります。

また、そこから逆に今まで気にもとめていなかった日本の文化に気付くこともあります。』

ー 著者「まえがき」より

学校では教えてくれない海外生活単語帳―気がつけばバイリンガル
著者:黒田基子
価格:1,080円

中身はこんな感じ↓↓↓

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今回は、ここまでです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
今週の「心をつなぐ英会話メルマガ」如何でしたか?

皆様のご意見・ご感想、ご質問・ご批判、お待ちしています。

See you next week !
また、読んでくださいねー。
さよならー。

発行者 山久瀬洋二
公式ブログ http://yamakuseyoji.com/
ご意見・ご感想等、お待ちしてます。
Email yamakuseyoji@gmail.com

山久瀬洋二お薦めの書籍

・対訳 TOKYO CITY GUIDE 観光客をもてなす極上のスポット

・HEALING SPEECH ヒーリング・スピーチ

・留学の真実

・BUSHIDO The Soul of Japan 英文版武士道

・DISCOVERING KYOTO IN TEMPLES AND SHRINES 対訳 京都の寺社


2015年1月20日火曜日

Post Clod War が産み出す『ロシア・ナショナリズム』

こころをつなぐ英会話メルマガ
今日の目次です。

1.ニュースなイングリッシュ
~Post Clod War が産み出す『ロシア・ナショナリズム』~

2.Twitterえーわー!
二カ国語で同じ意味を同時tweet!

3.英語で一言
~未来志向で
“Get over it and move on !”~

4.山久瀬洋二お薦めの一冊
~BUSHIDO : The Soul of Japan
英文版 武士道~

では、始まりです。

 1. ニュースなイングリッシュ

海外のメディアで報じられたニュースを解説します。日本のマスコミではあまり報じられない切り口で、本当はどういう意味で報じられているのかを私見を交えてお伝えします。

今週のテーマは、

「Post Clod War が産み出す『ロシア・ナショナリズム』」

です。


【海外ニュース】



Referendum was held in Crimea in full compliance with international norms.
Everything in Crimea speaks of our shared history and pride.

訳:クリミアでのロシアへの併合の是非を問う住民投票は、国際基準にのっとった管理のもとで実施された。
クリミアに関する全てのことがらは、我々に共通した歴史であり、プライドなのだ。
(ウラジミール・プーチン大統領の2014年5月21日、クリミアの併合にあたってのスピーチより)


【ニュース解説】

日本では、アメリカからの情報はよく流れてきます。

しかし、中国やロシア、そして他の国々からの情報は、その気にならない限りなかなか入手できません。

例えば、ウクライナ問題を考えるとき、それはロシアの誤った行為ととられ、日本も完全に西側の世論に加わっていることから、ロシアが悪で、西側が善、そしてウクライナはその善と悪との間に挟まれた悲しい犠牲者というステレオタイプな図式を信じている人が多くいるはずです。

前回、patriotism と fundamentalism とが融合しつつある危機について、パリでの事件を元に解説しました。

Patriotismの高揚。それはロシアでも例外ではありません。

ウクライナ問題の一つである、クリミア半島のロシアへの併合は、それを煽り、多数のロシア人の支持によって断行されました。

ここで紹介した、プーチン大統領の2014年5月の演説は、クリミア半島が元々ロシアが投資し、ロシアの活動拠点であった場所であり、黒海へ展開するロシア帝国の艦隊の基地でもあったと強調し、国民の拍手喝采をあびました。

確かに、クリミア半島は、ソ連の時代、ロシアもウクライナも同じ主権で動いていた時代に、ソ連共産党のイニシアチブでウクライナ共和国に管理をさせた地域でした。

しかしソ連が崩壊し、ロシアとウクライナが異なる主権国家となった現在、元々の「両親」であったロシアに戻すべきだというのがプーチンの主張の背景にはあるようです。

ロシアとしては、こうした過去の縺れた糸を正視し、クリミア半島が自国のものであることを、理解して欲しいと国際社会に訴えようとしたのです。

東西冷戦は、ソ連の崩壊により、アメリカの勝利で終息しました。

ソ連崩壊のあとの混乱の中で、ロシア経済は低迷し、国内の民族運動への抑圧や、その結果として発生したテロ行為などで、社会は大きく揺れました。

プーチン大統領が、そうしたロシアを強いロシアへと変貌させようと、権力闘争を進めながらも、国内ではナショナリズム煽ってきたことは事実です。

アメリカには、そうしたロシアの一挙一動が、依然アメリカの傘の下にある西側諸国にとっての脅威と映ります。

従って、アメリカは、プーチン大統領のこうした行為を国際社会への挑戦として排除し、批判しようと西側の同盟国を使い、世論も含め包囲網を狭めていったのです。

去年おきたマレーシア航空砲撃事件は、そんな思惑への絶好の材料となりました。

Patriotism が敗退的な fundamentalism へと傾斜してゆくとき、必ずあるのが、一つの国家や民族が追い詰められてゆく現象です。

そして、過激な nationalism が、丁度ウイルスに毒性が加わるように fundamentalism へと変化し相手に伝染することもあります。

一方の nationalism に相手が対抗し、相手方にも nationalism を醸成し、お互いを排除しはじめるのです。

双方が刺激し合いながら過激な排他主義への傾斜がはじまるのです。

西欧とイスラム社会、極東での日本と周辺国、今回取り上げたロシアとウクライナなど、過去の縺れた紐どうしがきしみ合う中で発火するプロセスは、世界に共通した事実といえましょう。

また、別の視点でみるならば、歴史的事件や戦争での勝者は過去にこだわらず、敗者は過去にこだわる傾向があることも知っておきたいものです。

冷戦の敗者となったロシアは、クリミアの過去にこだわり、それを併合し、国民の patriotism、そして nationalism を刺激したのです。プーチン大統領のこの演説は、そうした政治的意図を象徴したものといえそうです。

こうした課題を乗り越える一言、それが英語でよく使用される tolerance、すなわち「寛容」という言葉です。

お互いの歴史やいきさつへの寛容性が機能しなくなりつつある昨今こそ、国際政治の場で、双方の当事者が、この言葉の意味をもう一度見直す必要があるはずです。

この課題、来週もアメリカ西海岸から、さらに続けます。


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 2.Twitterえーわー!

毎日、英語と日本語で同じことをつぶやいてます。
間違いやすい英話や異文化コミュケーションのコツをお伝えしています。
中でもリツイートやお気に入りの多かったtweetをご紹介します。

【英語tweet】

Japanese love the expression of “a little bit” when they need to say something really serious. It’s their direct translation from Japanese.

【日本語tweet】

英語に慣れるまで maybe やa little bitといった表現は要注意。「多分」という曖昧な表現や、「少し心配」といった意味で深刻なことを語るのは日本人ならではの癖。Maybeやlittle bitはをれを直訳したもの。削除して真剣な、時には深刻な表情で意思を伝えましょう。


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 3.英語で一言

今回のテーマは、

「未来志向で “Get over it and move on !”」

です。

未来志向のアメリカ人。過去にこだわり、過去の問題の責任をまずはっきりさせてから未来に進むことをよしとする日本などアジア人と、この意識の違いがビジネスなどで摩擦を産み出すことがよくあります。

もともと未来を築くために移民として新大陸にやってきた人が集まるアメリカでは、過去をとやかく言ってもはじまらないという発想が育って当然です。

しかし、脈々と長い歴史を積み上げてきた国々では、過去へのプライド、さらには過去への執着が発想の土台にあるのも、これまた当然です。

過去があって、現在があり、そして未来があると考えるとき、そのどこに重きをおくかは文化によって異なるのです。

アジアの人々は多くが過去に重きをおき、アメリカや英語圏の人の多くは未来により興味を抱きます。

ですから、例えばビジネスの会話などで、我々が、過去におきたミスや問題をまず徹底的に検証しようという姿勢をとっても、相手はそれほど熱意を持って対応せず、こちら側はなんて無責任なんだと思ってしまうことがよくあるのです。

そして、その怒りを相手にぶつけても逆効果。却ってお互いのモチベーションに水をさしてしまうのです。

Get over it and move on. そうした彼らの意識を象徴しているこの一言。

「過去は過去、克服して前に進もう」というわけです。

この一言、逆に考えれば、相手が何か失敗したときに、元気づける一言として使ってみるのも一案です。

それでは、また。

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 4.山久瀬洋二お薦めの一冊

今週のお薦めは、

「BUSHIDO:The Soul of Japan
 英文版 武士道」

です。

現在でも日本人の心を知ろうとするとき、真っ先に読まなければならない必読書とされている「Bushido」。

大きな活字と難解単語の語注つきです。

新渡戸稲造が、日本人の道徳観の核心となっている「武士道」について、神道や仏教あるいは儒教の精神を典拠としつつ、西欧の哲学や騎士道と対比しながら、日本人の心のよりどころを世界に向けて解説した名著。

戦前の国際連盟事務局次長を務めた責任感から、日本人を世界に広く知ってもらおうとして自ら英文で書いたものであり、現在でも日本人の心を知ろうとするとき、真っ先に読まなければならない必読書とされています。

当時の米国大統領セオドア・ルーズベルトも『武士道』を読み感激した一人です。

外国人はもちろん、大きな活字と難解単語の語注つきだから、日本人にも読みこなせる一冊です。

BUSHIDO The Soul of Japan
英文版武士道
著者:新渡戸稲造
価格:1,512円


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今回は、ここまでです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
今週の「心をつなぐ英会話メルマガ」如何でしたか?

皆様のご意見・ご感想、ご質問・ご批判、お待ちしています。

See you next week !
また、読んでくださいねー。
さよならー。

2015年1月13日火曜日

パリの惨劇の背景とは。PatriotismとFundamentalismの狭間で

こころをつなぐ英会話メルマガ
今日の目次です。

1.ニュースなイングリッシュ
~パリの惨劇の背景とは。PatriotismとFundamentalismの狭間で~

2.Twitterえーわー!
二カ国語で同じ意味を同時tweet!

3.山久瀬洋二お薦めの一冊
~英会話3行革命~

では、始まりです。

 1. ニュースなイングリッシュ

海外のメディアで報じられたニュースを解説します。日本のマスコミではあまり報じられない切り口で、本当はどういう意味で報じられているのかを私見を交えてお伝えします。

今週のテーマは、

「パリの惨劇の背景とは。PatriotismとFundamentalismの狭間で」

です。


【海外ニュース】



Huge crowds and some 40 world leaders have gathered in Paris for a unity march after 17 people were killed during three days of deadly attacks.

訳:3日間の血なまぐさい戦闘で17名の死者をだしたことをうけ、大規模な群衆と40カ国前後の世界のリーダーがパリに集まり行進を


【ニュース解説】

年始早々にパリを襲った惨劇は、言論の自由を象徴するジャーナリズムをターゲットとした殺傷事件だけに、世界中にショックを与えました。

この事件、単にイスラム原理主義者の過激な行動による犯行だと片付けるには、余りに多くの背景があることを、ここで整理してみたく思います。

英語を学ぶ皆さんは、少なくとも世界に興味がある方々だと思います。

実は、今日本を含む世界が未来への不安に揺れているのです。

それを冷静に把握するポイントとして、patriotism(愛国心)と fundamentalism(原理主義)という二つの単語をここに並べてみます。

事件のおきたフランスは、最近EUやユーロ圏からの離脱を求める運動が拡大し、政治的に揺れていました。

西のイギリスでは、昨年スコットランドをイギリスから分離独立させ、逆に民族の自立を保ちながら、EUの経済圏の中で新しい国づくりをしようという動きが、住民投票にまで発展しました。

そして、東をみれば、ロシアでは、クリミア半島のウクライナからの分離とロシアへの併合の折に、プーチン大統領が、クリミア半島の歴史とロシア民族との関係を強調し、ロシア人の世論を大きく揺り動かしました。

これらの動きに共通していることは、歴史を振り返りながら、自らの立ち位置を考え直してゆこうというナショナリズムの潮流です。

このナショナリズムを弁護する言葉が patriotism です。

それはアメリカでも日本でも、中国でも世界中の国家で前向きな概念として捉えられている言葉です。

一方、イスラム社会では、西欧社会との確執が長引く中で、自らの文化や伝統への急進的な執着が、他者を暴力的に排除していこうという fundamentalism を産み出しました。

今回の犯行はその潮流の中でおきた悲劇といえます。

しかし、fundamentalism は、イスラム社会のみにある現象ではないのです。

例えば、ウクライナへの侵攻を続けるロシアの一部の民兵。

アメリカでキリスト教への厳格な回帰によって、グローバルな協調を拒絶して社会造りをしようとする人々。

ドイツやフランスでの移民排斥運動の背景にある、国家とキリスト教への至上主義など、fundamentalism の事例は世界に拡散します。

もちろん、日本国内にもそうした人々が多くいることも理解しておく必要があります。

今、世界を混沌とさせているのは、この patriotism と fundamentalism とが歩み寄り、時には微妙に融合しながら、世論が変化しつつあることです。

元来、patriotism は、自らのルーツを大切にしようという考え方もあり、それ自体が危険なものかというとそうではありません。

むしろ、patriotism を抱きながら、他の伝統や文化をも同時に重んじ、共存することの重要性が、20世紀後半の社会の潮流を造ってきたことは知っておきたい事実です。

そのお陰で西ヨーロッパには戦後70年、極東では朝鮮戦争以来60年以上にわたって、武器による紛争のない奇跡がおきているのです。

それは、個々の伝統や文化を diversity(多様性)として捉え、diversity を重んずることで、人々が共存する社会を造ろうという、patriotism を前向きに捉えていった結果保持された平和といえましょう。

EUはその象徴的な実験の場であったのです。

その考え方を脅かしているのが patriotism と fundamentalism との融合です。

それは、diversity によって産み出されようとする社会への反動力となって、世界の様々な地域を混沌に導いているのです。

このことが、今回のパリで起こった惨劇に、世界が強く反応した理由に他なりません。言論の自由は diversity への尊重がなければ成り立たないからです。

そして、今回の惨劇が、イスラム社会への偏見を助長したり、移民の流入を促進させる結果となっているEUの理念への警鐘ととられたりすることへ不安を抱く人も多かったはずです。

来週はニュースレターの中で、この課題をさらにロシアとウクライナの問題を取り上げながら、解説してみたいと思います。


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毎日、英語と日本語で同じことをつぶやいてます。
間違いやすい英話や異文化コミュケーションのコツをお伝えしています。
中でもリツイートやお気に入りの多かったtweetをご紹介します。

【英語tweet】

Do you have the motivated reason to study English? Do not study English if you don’t have a specific reason to do so.

【日本語tweet】

英語を勉強している人に一言。ジョギングをする人にも一言。この二つの共通点は、はじめては諦め、そしてまたやってみようとくり返すこと。続けられない人に共通しているのは、どちらも「苦行」であること。楽しく、モチベーションあることをするために英語を学習するという別の目標が必要。


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 3.山久瀬洋二お薦めの一冊

今週のお薦めは、

「英会話3行革命」

です。

初級者の英会話に関する共通の悩みは「質問に対してひと言でしか返すことができない」ということ。

だから、“会話” することに積極的になれないのです。

本書は、自分に関するさまざまな事柄を、“3行のフレーズ”で発信することを習慣づける、初級者のための英会話トレーニングブックです。

中学レベルの文法、短くシンプルなフレーズで初級者でも覚えやすく、使いやすい1冊です。

「Yes…」「No, I don’t」で途切れてしまう英会話に革命を起こしましょう!

英会話3行革命
著者:浦島久
価格:1,944円

著者「はじめに」より↓↓↓

『最近、自分が直接教えている多くの初級者に共通するある問題点に気が付きました。

当然と言えば当然なのかもしれませんが、それは質問に対してひと言でしか返すことができない、ということです。

中には Yes とNo だけを繰り返しているだけの生徒もいます。

これではなかなか英語を話せるようにはなりません。

そこで考えついたのは、「3行で話すようにしよう!」というアイデアです。』


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今回は、ここまでです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
今週の「心をつなぐ英会話メルマガ」如何でしたか?

皆様のご意見・ご感想、ご質問・ご批判、お待ちしています。

See you next week !
また、読んでくださいねー。
さよならー。

2015年1月6日火曜日

北朝鮮問題は「Chaotics」な時代の一つの事例

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1.ニュースなイングリッシュ
~北朝鮮問題は「Chaotics」な時代の一つの事例~

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3.山久瀬洋二お薦めの一冊
~留学の真実~

では、始まりです。

 1. ニュースなイングリッシュ

海外のメディアで報じられたニュースを解説します。日本のマスコミではあまり報じられない切り口で、本当はどういう意味で報じられているのかを私見を交えてお伝えします。

今週のテーマは、

「北朝鮮問題は『Chaotics』な時代の一つの事例」

です。


【海外ニュース】



More Sanctions on North Korea After Sony Case

訳:ソニーの事件をふまえ、北朝鮮にさらなる制裁を
(New York Timesより)


【ニュース解説】

2015年。100年前の1915年、世界は混沌の中にありました。

1914年の世界は、第一次世界大戦の真最中です。強国の多くがこの世界大戦を通して大きく変化しようとしていました。

ロシアでは、二年後に革命がおき、帝政から社会主義国家へと変貌しました。

トルコでも帝政が崩壊し、その傘下にあった中東各地では民族運動がおこり、大国の権益とからんで混沌が広がりました。現在の中東問題の原点となる環境が発症したのです。

そして、ヨーロッパでは1918年に長年ヨーロッパ社会を牽引していたオーストリアハンガリー帝国が消滅し、ドイツも革命でドイツ帝国が崩壊します。

極東はどうでしょうか。中国では1911年からはじまる辛亥革命で、清朝が倒壊しました。

その後、第一次世界大戦でドイツと戦争をはじめた日本は、混乱の最中にある中国のドイツの権益を押さえ込み、その権益の譲渡を1915年に中国側に要求。

これが、日中の対立へとつながり、最終的には満州事変や日華事変に続く第二次世界大戦での日本と中国との戦闘へとつながりました。

日本は、当時大戦での軍需景気で経済的には潤いますが、大戦が終わるやその逆風を受けて慢性的な不況に悩まされるのです。

それが、その後の日本の戦争への舵取りへとつながっていったことも周知の事実です。

一方そうした混沌の中、アメリカは、欧米の混乱の中で旧体制が崩壊するなか、世界最大の債権国へ成長し、世界のリーダーとなる経済力を培ったのです。

このように、100年前、世界は動乱の中にもがいていました。

そして、動乱の向こうには、その後の大恐慌や第二次世界大戦、冷戦から現在の世界情勢などにつながる様々な歴史の断面が見えてきます。

では、2015年はどうでしょう。

社会主義体制の崩壊から再生しようとするロシア。

そこにおきたウクライナ問題は、欧米と足並みをそろえるため、ロシアとの雪解けを模索していた日本の外交方針にも大きな影響を与えました。

さらにウクライナ問題は、そのままロシア経済を危機的な状況に追い込み、そこで発生したルーブルの下落は、世界経済にも波紋を広げています。

しかも日本は、いまだに100年前にはじまった日中の対立からくる確執に悩まされています。

中東では多くの国家が変化し、混沌や喧噪が続き、イスラム国の脅威や、アフガニスタンなどでの混乱の収集のメドはたっていません。

中国、インド、ブラジルなどの新興国とよばれる地域の政治経済動向もまだまだ未知数です。

アメリカは、この世界の混乱の中で長年維持してきたプレゼンスの保全に懸命です。

中南米での新たな秩序を目指し、キューバとの雪解けを積極的に進め、ロシアや中国との対立項の中で中東問題、アジアでの影響力の維持に懸命です。

そして、こうした状況の中で発生した北朝鮮とのサイバー戦争。

アメリカは極東での指導力の維持のために北朝鮮に強いボールを投げ続けます。

その中で、拉致問題などをどのようにハンドルするか、日本政府の舵取りが注目されます。

以上、ここに並べた素材を分析すれば、2015年を1915年と比較して世界の未来を予測する参考にすることがいかに有益か、わかると思います。

では、この複雑な世界情勢をどのように捉えるか。

ここで、マネージメント論など、経営関係の著作で知られるフィリップ・コトラーPhilip Kotlerの「Chaotics」という言葉を紹介しましょう。

「Chaotics」 とは、Chaosつまり混沌とした不安定な時代を示す造語です。

彼はそんな時代での経営のあり方について、この言葉をタイトルにした書籍で説いています。

同時多発テロ以降の世界がいかに予測不能な乱気流 turbulence の中にあり、そのことを常に意識した経営が必要だと説いているのです。

日本人はどちらかというとこうした「Chaotics」な状況への対応が苦手だといわれています。

あまりにもあらゆることに完璧を求め過ぎ、緊急事態や不測の事態への柔軟性、リーダーシップの取り方に問題があるからです。

今は、計画通り、または「こうあって欲しい」と考える通りに物事が進みにくくなる時代です。

ロシアと仲良くと思っても、北朝鮮とうまく交渉したいと思っても、自らとは一見無縁に思えるところから思わぬ横槍がはいり、そのために自らが望まない方向に政治や経済の舵がきられることも多くなるはずです。

2015年は、この10年間の経験に基づいて、「Chaotics」について、じっくりと取り組み、そうした時代に立ち向かうための様々な対策を産み出さなければならない年であるともいえそうです。

今年もよろしくお願いします。


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 2.Twitterえーわー!

毎日、英語と日本語で同じことをつぶやいてます。
間違いやすい英話や異文化コミュケーションのコツをお伝えしています。
中でもリツイートやお気に入りの多かったtweetをご紹介します。

【英語tweet】

See Japan from the world to identify the uniqueness of its culture. See our culture as part of global culture before finding the difference.

【日本語tweet】

この世界が大切だから、日本を大切にと思う発想が必要。日本を大切にという発想から、隣国そして世界を排除する発想に繋げるのは、グローバルな時代への逆行です。19世紀ならまだしも、我々が生きている世界には共通の利益が。だから、世界から日本をみて、自らの文化を大切にするべきなのです。


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 3.山久瀬洋二お薦めの一冊

今週のお薦めは、

「留学の真実」

です。

留学の最新情報と、成功の秘訣を教えます。

人気留学エージェント・高野幹生が、自身の留学体験と、仕事として多くの学生の留学に関わった体験をもとに、留学に関する有用な情報を厳選して伝授します!

留学のバリエーションや、目的別の最適な「留学」コースの選び方、費用や国毎の特徴などの最新情報と、エージェントだから知り得る「留学をめぐる周辺知識」などタメになる情報が満載。

当人はもとより、ご家族や学校の先生にも読んでいただきたい一冊です。

留学の真実
価格:1,782円
著者:高野幹生

《目次抜粋》

Part 1. 英語力をアップするには海外留学が一番の近道
Part 2. 高校留学の真実
Part 3. 語学留学の真実
Part 4. ワーキングホリデー、インターンシップの真実
Part 5. 海外の大学・大学院進学とディプロマの真実
Part 6. 留学準備と海外生活の真実

巻末資料1 おすすめ留学先「学校情報」
巻末資料2 文中の資料出典リスト
巻末資料3 留学の準備に役立つリンク先情報



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今回は、ここまでです。

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