2018年1月8日月曜日

未来型の Core Competence の創造とは



【ニュース】
China e car venture future mobility names brand Byton, eyes U.S., Europe.
訳:中国の未来型の自動車へのカーベンチャーはアメリカとヨーロッパを視野にバイトンというブランド名を(ロイターより)

【ニュース】
Byton has revealed an electric vehicle that it thinks presents a glimpse at the future of how we will drive and interact with cars.
訳:バイトンは将来我々がいかに運転とデジタル上のインタラクションとを共有してゆくかというテーマを見据えた電気自動車を披露(BBCより)

【解説】

(1) Bytonが自動車業界に本格参入

中国とヨーロッパ、そしてアメリカの頭脳を集め、自動車産業に新しい台風の目を創造しようという動きが注目されています。ロイター通信、BBC放送などが積極的に報道しています。

コンシューマーテクノロジー分野での見本市で知られるCESが、現在ラスベガスで開催されています。
そこで注目されたのが、中国の資本によりBMWやAppleなどの技術者が共同して開発した新型の電気自動車Bytonでした。
Bytonという名前は、Byteson Wheelsからきています。Bytonの母体となるFuture Mobility Corp.は中国の電気自動車開発会社で、ここにBMWの技術部門で活躍してきたCarsten Breitfeld氏が中心となって制作してきたのがBytonという車です。
この車は、我々が日常触れているインターネットの世界を車に導入し、車とインタラクティブな環境との究極の融合を目指した製品で、開発センターは南京とカリフォルニアのサンタクララ、ミュンヘンにあります。そして、技術者の中には、グーグルやApple、さらにはTeslaやNissanに関わった人々までが含まれています。
Bytonはまずアメリカとヨーロッパの市場で2019年にデビューし、その後販売ネットワークを拡張してゆくことになっています。もちろん中国も重要なターゲットです。

(2) 人材ネットワークがCore Competenceのあり方を変える

このプレスリリースが物語ること。それは人のネットワークです。
今まで企業はその企業が持つコアテクノロジー(基幹技術)Core Technologyを基に、その企業技術と文化をいかに大切にしながら海外に進出し、そのテクノロジーを海外に移植してゆくかというテーマに没頭していました。日本の企業はその典型です。ですから、海外に進出するとき、自らのスペックに対するこだわりが極めて強く、海外で採用した社員もそのスペックを学ぶことにプライオリティをおかされてきたのです。これが通常のグローバル企業の技術移管Technology transferのあり方でした。そしてこのCore Technologyによって育まれるのがCore Competence(強い競争力)であると考えてきたのです。

この企業経営の土台が根本から変化しようとしているのです。
ある意味で日本人が一番苦手としている、海外の知恵とネットワークして、コンセプトを造り、そこに資本を投下して製品を作ってゆくという手法がBytonをはじめとした自動車業界をも席巻する世界各地のベンチャー企業の手法となっているのです。

昔、Silicon ValleyシリコンバレーとSilicon Alleyシリコンアレーのコラボという発想がありました。
ハイテク産業都市が集中するシリコンバレーで技術を開発し、もともと出版産業などが多くコンテンツを制作することのできるニューヨークのalley(路地)で技術にコンテンツを注入して製品化するというのが、電子ブックなどの開発の背景にあったのです。自動車産業の場合、このSilicon Alleyにあたるのがコアテクノロジーを有する既存の自動車メーカーと下請けネットワークでした。ここに世界中の未来型知識を導入することが、現在版のSilicon ValleyとSilicon Alleyのコラボなのです。エンジンとシャシChassisの技術にいかに世界の知恵と結合させ、integrate(統合)してゆくかが課題なのです。

(3) 日本の製造業の課題とは

そもそも、Bytonはなぜ日本のマーケットをターゲットにしていないのでしょうか。おそらく日本は日本の自動車業界が既にネットワークしているため、進出が難しいと思ったからでしょうか。それとも、日本に進出するには日本独特のガラパゴス的な要望に応えてゆく必要があり、その手間とコミュニケーションの難しさを考えたとき、とりあえず日本はスキップしておいたほうが効率的と思ったのかもしれません。

こうしたことから推測し、考えなければならない日本の産業の求められる将来像。それは、世界の人材と自由に交流できるノウハウと人の養成に他なりません。そして、日本のノウハウの輸出というスタンスから、日本のノウハウと世界の知恵との融合というスタンスに、製造量の戦略をシフトさせることから、新たなCore Competence(強力な競争力)を創造することが必要です。
そのための発想と組織構造を企業が育成してゆくことが求められているのです。




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