2018年1月30日火曜日

組織とリーダーシップの取り方への意識変革にさらされる日本企業の未来とは



【ニュース】
The global economy requires a new set of leadership skills-imbued with a global mindset, multi-functional and effective across cultures and nationalities-that were not as critical even a decade ago.
訳:世界経済は、地球規模の意識によりそい、文化や国境を越え、あらゆる状況で機能でき効果的に活動できる、10年前ですら求められなかった新たなリーダーシップを必要としている(Nicholas Brealey社刊行、What is Global Leadership?より)

【解説】
前回(2018年1月9日号)、Core Competenceの新たなあり方に日本企業が晒されている状況を、自動車業界を例にとって解説しました。

今回は、さらにこの問題を「系列」という日本企業のピラミッド構造を見つめながら掘り下げたいと思います。
日本の大企業は、長年下請けのピラミッドに支えられてきました。
自動車業界を例にとると1sttierから3rdtireさらにはその下に至る下請けの重層構造の上に大手と呼ばれるメーカーが君臨しています。
そして、エンジンの製造者やブレーキの部品製造者などの大型の下請け企業の規模は、ともすれば自動車を販売する会社よりも大きい場合もあるほどです。

これは、単に自動車業界に限ったことではありません。全盛期の家電業界をはじめ、ありとあらゆる製造業がこの構造に支えられてきました。この下請けに支えられる重層構造を系列とよび、世界の人々はその言葉をそのままKeiretsuと呼んできたことはよく知られた事実です。日本企業でのリーダーシップはこの縦社会でいかに舵をとるかというノウハウそのものだったのです。

バブルの頃、このKeiretsuこそが日本企業のパワーであると多くの人は思っていました。ところが、バブルがはじけ、日本企業が苦境にさらされると、海外の人はこのKeiretsuの閉鎖的な構造が、日本の経済力を世界から孤立させているのだと批判しました。そして、その頃から国際企業でのリーダーシップの取り方そのものが変化をはじめました。

日本企業にとってみれば、ある意味でKeiretsuは便利のよいものでもあったのです。長年の付き合いの中で、かなりの仕事が阿吽の呼吸でできたのです。「いつものようにお願いします」といえば、相手は即座に対応でき、「このあたりを去年のモデルより滑らかに」といえば、過去から累積された経験に基づいて、下請けはメーカーが満足する部品を即座に調整してもくれました。

ところが、IT技術の進歩によって、このピラミッド型の構造だけに頼っていては物事が進まなくなりました。ITの業界ではシリコンバレーを中心に多くの企業がM&Aを重ね成長しました。そして、製造業の多くはこれら巨大化した新たな企業の技術を取り入れてゆかなければならなくなったのです。

もともと日本のような強力な下請けの絆のなかった海外の企業は、部品の調達や技術の移管をフラットなネットワークの構築によってまかなってきました。自動車業界でいうならば、例えばフォードは世界中から部品を調達し、部品の製造者は常に価格や技術の競争を通して、自らを売り込んできました。
一方、日本の企業は海外に進出する場合でも下請けに助力してもらいました。また、海外に進出したときも、常に本社が主導して海外の拠点を自らのピラミッドの中に取り込んでゆきました。日本から常に管理者を送り込み、日本のやり方を現地に移植することが、海外との付き合い方であると考えてきました。

そんな日本企業が、IT技術など先端のテクノロジーを導入するために、M&Aや世界とネットワークして成長した海外の企業と付き合い始めたとき、状況が一転したのです。
点と点とを繋ぎながら、フラットで交錯した組織構造をもって成長した海外の企業と、縦社会のシンプルなピラミッドに頼ってきた日本企業との発想の違いが、様々な摩擦を生み出したのです。フラットで世界に拡散する新たなネットワークに対して、いわゆるプロアクティブで、インターラクティブなリーダーシップを発揮するノウハウを日本企業は育てていなかったのです。
例えば、日本企業が海外に発注した商品が、その企業のM&Aによって、それを生産する部門がいきなり売却されたために、部品調達そのものの機会が消滅することもありました。
開発がいきなりストップしたり、納期が大幅に遅れたりということも日常茶飯事となりました。そして、こうした課題が顕在化したときに、それを解決してくれる人的組織的ネットワークを海外に有することもできないまま、グローバル経済の変動に翻弄されることが日常となったのです。

得てして海外の企業はマトリックス型の組織で運営されます。日本語に訳せば交錯型組織とでもいうのでしょうか。
この組織構造では、レポートラインや製造開発のラインが上に向かって一直線に伸びるのではなく、例えば財務上の決裁は香港で行い、人事はシンガポール、そして開発の責任はその製品ごとに最も優秀な組織が存在する世界各地に点在といったように、組織の指示系統やレポートラインが複雑に交錯しているのです。日本企業は下請けも含めて、こうした企業構造をハンドルできないままに翻弄されるのです。

さらに、日本企業はピラミッド型の重層構造が厚くなればなるほど、カジュアルにネットワークする海外の企業と比較すると決裁decision makingにも時間がかかり、様々な根回しを経てやっとGOサインがでたときは、海外の企業はそのプロジェクトそのものに対してとっくに興味を失っているということがしょっちゅうおきるのです。

今、日本企業はこうしたグローバル企業のネットワークや、新規ビジネスを生み出すフラットな組織構造への対応を迫られているのです。1sttierの下請けの持つ重層な組織が、こうした情報のメーカーへの伝達の阻害要因になっていることも考えてゆかなければならないのです。
より早い情報の入手と、その情報への対応、そしてそこからいかに迅速に舵をきることのできる柔軟な組織を創造できるか。これを怠るとき、日本企業の将来は暗雲に覆われるのです。

2018年1月23日火曜日

ノンバーバル「非言語」と異文化の誤解について理解しよう



【ニュース】
Non-Japanese people want to create meaningful relationships, But they cannot do so if you do not help them.
訳:日本人だけではなく、我々も意義ある人間関係を造ろうとしているんだけど、色々と教えてくれないと無理なのです。(外国人の日本人へのコメント)

【解説】
(1)異文化の罠につかまると、善意が誤解の連鎖に変わってしまう

仕事で海外の人と一緒に活動するとき、なんでこんな反応をするんだろうと、外国人に対して不信感をいだいたことはありませんか?
実は、その原因の一つは日本人側にあることに気づいていない人が意外と多くいるのです。
もちろん外国の人は意義ある人間関係を構築しようとしています。
しかし、日本人が助力しないかぎりその達成は不可能というわけです。

英語ができるということと、外国人とうまくコミュニケーションができ、ビジネスができるということは、必ずしも一致しないのです。
その言語の、相手に合った使いかた、そして言語の他に必要なコミュニケーションの方法を知らない限り、海外の人とうまくビジネスをすることはできないのです。

相手に合った言語の使い方とは、

 1. 聞き方と喋り方、あるいは書き方
 2. 相手の頭の中に入るような情報の出し方
 3. プレゼンテーションやフィードバックのノウハウ

などを意味します。

そして、ここで言葉以外のもの、つまりNon-Verbal(非言語)とは何かについて考えてみましょう。非言語とは、

 1. ジェスチャーや表情
 2. 言いたいことの表明の仕方
 3. 相手とのやりとりのテクニック

のことです。

まず、言語以外のコミュニケーションについて触れてみます。

 1. ジェスチャーや表情とは、正に文字通り、どのような手振り身振りをすれば相手に自分の言いたいことが伝わりやすくなるのかであり、笑みや深刻な顔を使い分けることによって相手との言葉のキャッチボールを少しでもスムーズにすることを意味します。
 2. 言いたいことの表明の仕方とは、いつどのような形で自らの主張を切り出し、合意を求めるかという、プレゼンテーションのテクニックです。
 3. 相手とのやりとりのテクニックとは、相手にどういう方法でメッセージを伝えるか、わからないことをどのようなタイミングで質問するかという、相手とのコミュニケーションを促進する上での目に見えないノウハウです。

この3つの要素をしっかりと理解した場合、たとえ語彙力などが充分でない人でも、相手との信頼関係を構築でき、ビジネスでの交渉も、英語が上手くてもこれらの要素を満たしていない人よりも上手く進めることができるのです。もし、聞き取り能力が不安な人でも、その不安をかなり解消することができるのです。

そして、こうしたノウハウの習得のためには、まず「異文化」とは何かということを理解することからはじめなければなりません。

(2)常識や判断が通じない異文化環境について理解しよう

まず、以下のコメントについて考えましょう。

Japanese people are used to living in a monoculture. This has deprived them of the need to explain individual differences in thought in order to understand each other.訳:日本人は、単一文化の中で生活することに慣れてきました。これは、人と人とが意見の違いがあるときに、それをちゃんと説明しお互いに理解する必要性を疎外してきたのです。

これは、多くの外国人が日本人に対して指摘していることです。
この言葉は、グローバルな環境では、日本人がついつい言外に意味を含ませて相手に伝えようとする「阿吽(あうん)の呼吸」での意思疎通は通用せず、いかにしっかりと言いたいことの内容を説明することが大切かということを意味しています。そして彼らはこう説明します。

In this multicultural community called earth there is no value in vagueness as individuals from various backgrounds seek business and social opportunities together.
訳:この地球という多様な文化が共存する社会では、様々な文化背景をもった人々が一緒にビジネスやお互いの社会的な利益を追求するとき、曖昧模糊とした表現は通用しないのです。

まず知っておきたいことは、異文化環境では、今まで自分が正しいと思ってきた常識や判断が通用せず、時には裏目に出ることもあるということです。それが、「異文化」という環境の特徴なのです。
しかも、自らの常識に従った行動は、あまりにも日常的なことなので、多くの場合無意識になされ、それが故にまさか相手が全く異なった受け取り方をしているということにも気づくことなく、誤解が深刻になっていく可能性があることを知っておく必要があります。
これが異文化間のコミュニケーションで発生する悪循環なのです。

2018年1月16日火曜日

海外の人と仕事を進めるノウハウについて


【ニュース】
Intercultural communication is used to describe the wide range of communication processes and problems that naturally appear within an organization or social context made up of individuals from different religious, social, ethnic, and educational backgrounds.
訳:異文化コミュニケーションは、異なる宗教や社会、民族、そして教育環境が生み出す課題やコミュニケーションのプロセスを幅広い視野でとらえて使用される言葉である。(ウエキペディアより)

【解説】
海外の人とどう働くかというテーマを考えるとき、まず海外の人が日本人と仕事をするにあたって、どのような点に不満を持っているかを知っておく必要があります。

今まで内外を含め、4000人の企業エグゼクティブに対して、いかに日本人が海外で仕事をし、海外の人がいかに日本人と業務を共にするかというノウハウについて研修をしてきました。
その中で、海外の人が口を揃えて語るのが、日本人と情報を共有することの難しさでした。しかし、このことを日本人側に伝えると、十分に説明してあるのにどうしてだろうと首を傾げます。

一方、日本人は海外の人に対して、品質管理が雑で、物事の締め切りをまもらないと不満を言います。完璧な準備を求め、その上で仕事を進めたがる日本人からしてみると、まず動きながら調整をして仕事を進めようとする海外の人のビジネス文化に馴染めないのです。

一口に海外といっても、アジア諸国もあれば欧米もあり、そのビジネス文化は多様です。日本人が知っておかなければならないことは、日本人の仕事のやり方も、その多様なビジネス文化の一つに過ぎないという事実です。日本だけが特別でもなければ、仕事への取り組み方が秀でているわけではないのです。

ここで、考えたいのは二つの異なる方策です。
一つは、海外の人を海外からということで特別に意識するのではなく、同僚として仲間に受け入れてゆくことです。つまり、このことは日本人だけの機微の問題だからといって海外の人に情報を選んで伝えることは控えたいのです。情報をうまく共有するには、主観ではなく、客観的にその情報に背景やロジックを説明する必要があります。阿吽の呼吸ではなく、できるだけ詳細に理由や状況を伝える必要があるのです。
そしてもう一つは、海外の人の文化背景や、ビジネスコミュニケーションの方法への理解と尊重の精神を養うことです。つまり、最初に日本の事情をオープンに共有し、日本の職場で「ガイジン」として相手を分け隔てするのではなく、同時に、海外から来た人の背景を尊重するという二つの異なるアプローチを共有させることが必要なのです。

先にも触れましたが、ビジネス文化は、欧米とアジアでは著しく異なります。また、欧米でも、一例を挙げれば、ドイツとアメリカとでは水と油といってもいいほど、コミュニケーションの方法が異なります。
であれば、海外の人とうまくコミュニケーションをして、ビジネスを進めてゆくための方程式は存在しないのです。
ただ、一般的にみて、日本人は海外の人よりも詳細な質問や確認を相手にすることを遠慮しがちです。異文化環境では、相手と理解し合っているかを積極的に確認しない限り、誤解が累積するのです。また、仕事の途中で、うまく進んでいるかどうかを、具体的に伝え合うフィードバックを怠りがちです。日本語環境でのコミュニケーションスタイルは、英語に比べると、自らの意図を間接的に相手に伝え、一をいうことで十を理解してもらおうとしがちです。これが情報共有の不足へと繋がってゆくのです。

つまり、相手のコミュニケーションスタイルにいかに対応するかを、その人が所属する文化への理解を深めながらノウハウとして蓄積してゆかなければならないのです。その上で、日本人のコミュニケーションの方法を相手と共有しなければならないのです。
問題は、日本人が自らの文化について、それがあまりにも日常的なことなので、客観的に理解し、説明できないことです。
そのためには、彼らから積極的にフィードバックを受けることも必要です。彼らがどのように我々のことを思っているか、満足しているのか、あるいは誤解していないのか、常に言葉で確認するのです。この「言葉」で確認するという行為を繰り返すことで、お互いの意思疎通が促進されます。

異文化環境では、こちらがおかしいなと思っているときは、必ず相手も疑問に思ったり不快に感じたりしているはずです。お互いにしっかり仕事をしてよい結果をだそうとしながら、コミュニケーション文化の違いに気付かないために誤解が拡大するのです。

オープンに意見を交換する中で、試行錯誤を繰り返し、双方が歩み寄るフェアな環境を創造する必要があるのです。

2018年1月8日月曜日

未来型の Core Competence の創造とは



【ニュース】
China e car venture future mobility names brand Byton, eyes U.S., Europe.
訳:中国の未来型の自動車へのカーベンチャーはアメリカとヨーロッパを視野にバイトンというブランド名を(ロイターより)

【ニュース】
Byton has revealed an electric vehicle that it thinks presents a glimpse at the future of how we will drive and interact with cars.
訳:バイトンは将来我々がいかに運転とデジタル上のインタラクションとを共有してゆくかというテーマを見据えた電気自動車を披露(BBCより)

【解説】

(1) Bytonが自動車業界に本格参入

中国とヨーロッパ、そしてアメリカの頭脳を集め、自動車産業に新しい台風の目を創造しようという動きが注目されています。ロイター通信、BBC放送などが積極的に報道しています。

コンシューマーテクノロジー分野での見本市で知られるCESが、現在ラスベガスで開催されています。
そこで注目されたのが、中国の資本によりBMWやAppleなどの技術者が共同して開発した新型の電気自動車Bytonでした。
Bytonという名前は、Byteson Wheelsからきています。Bytonの母体となるFuture Mobility Corp.は中国の電気自動車開発会社で、ここにBMWの技術部門で活躍してきたCarsten Breitfeld氏が中心となって制作してきたのがBytonという車です。
この車は、我々が日常触れているインターネットの世界を車に導入し、車とインタラクティブな環境との究極の融合を目指した製品で、開発センターは南京とカリフォルニアのサンタクララ、ミュンヘンにあります。そして、技術者の中には、グーグルやApple、さらにはTeslaやNissanに関わった人々までが含まれています。
Bytonはまずアメリカとヨーロッパの市場で2019年にデビューし、その後販売ネットワークを拡張してゆくことになっています。もちろん中国も重要なターゲットです。

(2) 人材ネットワークがCore Competenceのあり方を変える

このプレスリリースが物語ること。それは人のネットワークです。
今まで企業はその企業が持つコアテクノロジー(基幹技術)Core Technologyを基に、その企業技術と文化をいかに大切にしながら海外に進出し、そのテクノロジーを海外に移植してゆくかというテーマに没頭していました。日本の企業はその典型です。ですから、海外に進出するとき、自らのスペックに対するこだわりが極めて強く、海外で採用した社員もそのスペックを学ぶことにプライオリティをおかされてきたのです。これが通常のグローバル企業の技術移管Technology transferのあり方でした。そしてこのCore Technologyによって育まれるのがCore Competence(強い競争力)であると考えてきたのです。

この企業経営の土台が根本から変化しようとしているのです。
ある意味で日本人が一番苦手としている、海外の知恵とネットワークして、コンセプトを造り、そこに資本を投下して製品を作ってゆくという手法がBytonをはじめとした自動車業界をも席巻する世界各地のベンチャー企業の手法となっているのです。

昔、Silicon ValleyシリコンバレーとSilicon Alleyシリコンアレーのコラボという発想がありました。
ハイテク産業都市が集中するシリコンバレーで技術を開発し、もともと出版産業などが多くコンテンツを制作することのできるニューヨークのalley(路地)で技術にコンテンツを注入して製品化するというのが、電子ブックなどの開発の背景にあったのです。自動車産業の場合、このSilicon Alleyにあたるのがコアテクノロジーを有する既存の自動車メーカーと下請けネットワークでした。ここに世界中の未来型知識を導入することが、現在版のSilicon ValleyとSilicon Alleyのコラボなのです。エンジンとシャシChassisの技術にいかに世界の知恵と結合させ、integrate(統合)してゆくかが課題なのです。

(3) 日本の製造業の課題とは

そもそも、Bytonはなぜ日本のマーケットをターゲットにしていないのでしょうか。おそらく日本は日本の自動車業界が既にネットワークしているため、進出が難しいと思ったからでしょうか。それとも、日本に進出するには日本独特のガラパゴス的な要望に応えてゆく必要があり、その手間とコミュニケーションの難しさを考えたとき、とりあえず日本はスキップしておいたほうが効率的と思ったのかもしれません。

こうしたことから推測し、考えなければならない日本の産業の求められる将来像。それは、世界の人材と自由に交流できるノウハウと人の養成に他なりません。そして、日本のノウハウの輸出というスタンスから、日本のノウハウと世界の知恵との融合というスタンスに、製造量の戦略をシフトさせることから、新たなCore Competence(強力な競争力)を創造することが必要です。
そのための発想と組織構造を企業が育成してゆくことが求められているのです。