2015年2月3日火曜日

国際問題の最大のリスク『見えない国境とは』

こころをつなぐ英会話メルマガ

今日の目次です。

1.ニュースなイングリッシュ
~国際問題の最大のリスク『見えない国境とは』~

2.Twitterえーわー!
二カ国語で同じ意味を同時tweet!

3.世界の心の交差点で
~過去を見詰めたい日本人 vs 前に進みたい欧米人~

4.山久瀬洋二お薦めの一冊
~1日10分 超音読レッスン「エコノミスト編 」~

では、始まりです。

 1. ニュースなイングリッシュ

海外のメディアで報じられたニュースを解説します。日本のマスコミではあまり報じられない切り口で、本当はどういう意味で報じられているのかを私見を交えてお伝えします。

今週のテーマは、

「国際問題の最大のリスク『見えない国境とは』」

です。


【海外ニュース】



2 Israeli Soldiers Killed in Missile Attack Along Lebanese Border

訳:レバノンとの国境沿いでのミサイル攻撃に遭い、イスラエル兵二人が死亡
(ニューヨークタイムズより)


【ニュース解説】

日本人を対象にした人質事件などによって、通称イスラム国の状況が日本でもクローズアップされました。

今世界でおきているこれら様々な事件を理解するノウハウについて、ここで解説してみましょう。

アラブ情勢、そしてウクライナ情勢などの複雑な国際情勢を考えるとき、我々は一つの固定概念を捨てなければならないことを、今痛感しています。

世界情勢を考えるとき、我々はともすると、現在の国境とそこにある国家に目がいって、国と国との対立項を意識します。

でも、それは島国である日本人が陥りがちな大きな誤解なのです。

わかり易い例をお話ししましょう。

アメリカに居住するネイティブ・アメリカン(日本では今でもアメリカン・インディアンと呼ぶ人が多いかもしれません)というと、多くの人は鳥の羽を頭に飾り、西部の荒野で生活する人々をステレオタイプにイメージします。

しかし、ネイティブ・アメリカン Native American には無数の部族があり、彼らはニューヨークなど東海岸も含め、全米で生活していました。

風俗習慣も多様で、農耕民族も狩猟民族もいて、時にはお互いに対立もしていました。

その対立を、新たに移住して国家を造ったアメリカが利用したこともあれば、迫害 oppress したこともあり、様々な経緯で現在のアメリカ社会の中でのネイティブ・アメリカンの社会が形成されました。

アフリカをみれば、そうした部族同士の争いが、目を覆いたくなるような虐殺事件 genocide に発展した例が多々あります。

90年代には中部アフリカのルワンダではフツ族とツチ族の部族対立が内戦となり、多数の血が流れています。

ヨーロッパでも、旧ユーゴスラビアの地域では90年代にムスリム系の人々が内戦中に多数虐殺、レイプなどの被害にあったことは記憶に新しいはずです。

こうした事情を考えて、今おきているイスラム国と呼ばれる組織の活動をみたとき、そもそも、この広範な地域で活動する様々な部族、宗教宗派が、目に見える国境の中に別の国境をもっていることを知っておく必要があるのです。

今回、見出しで紹介したイスラエルの兵士を殺害したヒズボラは、イスラム過激派と一言でいってもレバノン南部でイスラエルへ対抗して活動するシーア派集団で、スンニ派が動かすイスラム国とは異なります。

また、シリア内戦の原因となったアサド政権を支える宗派は、アラウィ派という別の宗派です。

問題は、こうした我々には見えない宗派や民族による国境が、世界中にアメーバのように存在していることです。

ウクライナでも、例えば、ヨーロッパの先進国の中でもそうした見えない国境 invisible boundary が時には平和に共存し、問題がおきれば対立項としてクローズアップされてくるのです。

そして、そこに時代時代でグローバル戦略をもって活動する列強が、これらの見えない国境を利用し、影響力の維持に努めてきたのです。

19世紀から20世紀初頭には、ヨーロッパ列強、オスマントルコ、その後はソ連、アメリカなど、例を挙げればきりがありません。

さらに、これら列強の活動の中で、見えない国境の上に、自らの利害と政治的意図で見える国境が設定されたのが、現在の中東の混沌の原因なのです。

人質事件のみならず、国際問題を考えるには、この見えない国境と見える国境との複雑な縺れ tangled web を理解し、そこに動く人々の過去と現在の糸をたどる現地への理解が、最も求められるのです。

長年そうした地域での活動のノウハウをもつ欧米諸国は、外交官の演説や人との接触の多くも、そうしたタイミング、場所、そこにいる人、そして見えない国境での状況への情報をしっかりと入手して行われています。

ですから少なくとも、アラブ世界にテロへの断固とした抗議を表明するとき、見えない国境の真ん中で震源地を形成しているイスラエルの首相や国旗の側でスピーチをすることのリスクを、安倍首相は理解していたのでしょうか。

そして、そのスピーチをどうしてもする必要があるなら、ヨルダンやトルコ、そして新生イラクなど周辺国へ、外交的な配慮をしておいたのでしょうか。

見えない国境こそが、国際問題の発火点になっているということは、人類5,000年の歴史で、常に繰り返されてきていることなのです。


バックナンバー(山久瀬洋二ブログ)

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 2.Twitterえーわー!

毎日、英語と日本語で同じことをつぶやいてます。
間違いやすい英話や異文化コミュケーションのコツをお伝えしています。
中でもリツイートやお気に入りの多かったtweetをご紹介します。

【英語tweet】

Please try to sit down in front of the people to exchange the "face to face communication". Then you avoid giving people wrong impression.

【日本語tweet】

ネイティブでないあなたは、英語で打ち合わせをするとき、特に相手が複数いるとき、できるだけ一番よく話さないといけない人の正面に座りましょう。横に座ると、相手の英語への理解力が音声面で半減し、自らのインパクトも少なくなります。正面に座ることで存在感もしっかりアピールできるはずです。


山久瀬洋二twitter はこちら

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 3.世界の心の交差点で

今回のテーマは、

「過去を見詰めたい日本人 vs 前に進みたい欧米人」

です。

「ねえ、何故あのとき、すぐに対応しなかったのですか」

ある人が、いつになっても謝らないアメリカ人の仕事先に腹をたてて、そう切り出しました。

「だって、我々がいなくても、代替の人で充分対応ができたでしょう」

「そんなことじゃない。責任感の問題だよ。仕事に対する」

「なんだって?僕はいろんなことをやっているんだ。対応ができることを人に任せて何故いけないんだい?僕にはこのプロジェクトの他にも、色々な仕事に、そして家族にも責任がある。いったい何がいいたいんだい?」

このような、あるいはこれに近い会話を経験したことのある海外在住者は多いはずです。

仮に、こうした会話の経験はなくても、心の中で「責任感の問題だよ!せめて謝れよ!」と叫んだことのある人は多いのではないでしょうか。

「どうして、日本人は過去のことをいつまでもしつこく取り上げるんだろう」

「いやね。過去のことをしっかりと理解しないと、未来へ進めないでしょう」

「そんなことはない。未来はこれから造るもの。過去の責任を追求するよりは、同じ問題をおこさないために、これからどうしてゆくべきか、ソリューションを話し合うべきじゃないかな」

「いや、だからこそ過去のことをしっかり検証すべきだ」

「違うよ。日本人は誰に責任があるかを明快にして、その人に謝ってもらいたいだけだろ。それは検証じゃないよ」

謝ることは日本の文化ではとても大切だと、今までに何度も触れてきました。確かに、日本の社会では、謝ることで相手との緊張もほぐれ、和を保ちながら未来に向かうことができます。

しかし、アメリカなど多くの社会では、その心理的プロセスが日本のように強力な要素として文化の中にないのです。

ですから、日本人が海外の人に謝って欲しいと思っても、思うようには対応してくれません。

やがて、感情が鬱積し、抑えていた気持ちをそれでも控えめに、ぼそっと文句をいえば、そこに論理性を感じない欧米の人は、戸惑うか、不快に思って反論するか。いずれにしろ良い結果は望めません。

「ではどうすればいいんだい?」

と日本人は叫びます。

「単純かことさ。未来志向に話をして、今後同じ問題などに直面したときはどうすればいいか、お互いに話し合ってagreementを結べばいいんだよ」

「責任を認めて、謝るのではなく、話し合って agreement か」

「そう。ちゃんとロジックをもって語り合う姿勢が respect という言葉の意味なんだよ。お互いに respect しようじゃないか」

例えばサービス業を例にとりましょう。

そこではサービスを提供する方が、サービスを受ける人に対して下の位置にいて、相手をたててゆくべきだという考え方が日本にはあります。

その上下関係の意識が、何か不都合があったときに、相手に謝ってもらいたいという心理を助長します。

逆に、基本的に人と人とが平等であるという文化の元で教育を受けてきた人は、サービスを提供することと、人の上下関係とを切り離して考えがちです。

このギャップが異文化環境での摩擦を産むのです。

特に、過去にこだわる意識に中に、こうした謝罪への願望が隠されているとき、その摩擦は深刻になってしまいます。

日本人は相手を責任感のない奴だと思い、相手は日本人のことを、理不尽で横柄な奴だと勘違いするのです。

未来志向の強い欧米型のコミュニケーションスタイルと、過去を固めた上で未来を造ろうとする日本人の意識とのギャップの陰に、こうした謝罪への願望という要素があるということを是非理解しておきましょう。

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 4.山久瀬洋二お薦めの一冊

今週のお薦めは、

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です。

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今回は、ここまでです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
今週の「心をつなぐ英会話メルマガ」如何でしたか?

皆様のご意見・ご感想、ご質問・ご批判、お待ちしています。

See you next week !
また、読んでくださいねー。
さよならー。

発行者 山久瀬洋二
公式ブログ http://yamakuseyoji.com/
ご意見・ご感想等、お待ちしてます。
Email yamakuseyoji@gmail.com

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