2014年6月17日火曜日

報道の自由か、国家の利益か

こころをつなぐ英会話メルマガ

こんにちは。山久瀬洋二(やまくせようじ)です。

英語での意思疎通の最大の阻害要因は、文化の違いに起因しています。私は、文化の異なる人々と相互に理解を深めるため、「異文化ビジネスコンサルテーション」を行っています。

このメルマガでは、単なる英語力の向上だけでなく、伝わる英語のエッセンスをお伝え出来ればと思っています。

今日の目次です。

1.ニュースなイングリッシュ
~報道の自由か、国家の利益か~

2.Twitterえーわー!
二カ国語で同じ意味を同時tweet!

3.山久瀬洋二お薦めの一冊
~リーン・スタートアップ~

では、始まりです。

 1. ニュースなイングリッシュ

海外のメディアで報じられたニュースを解説します。日本のマスコミではあまり報じられない切り口で、本当はどういう意味で報じられているのかを私見を交えてお伝えします。

今週のテーマは、

「報道の自由か、国家の利益か」

です。


【海外ニュース】



Supreme Court Rejects Appeal From Reporter Over Identity of Source
(New York Times より)

訳:最高裁は、記者の取材源の秘匿を拒否


【ニュース解説】

ニューヨークタイムズといえば、アメリカのみならず、世界のジャーナリズムを代表する新聞です。同紙は今まで、アメリカや世界各地の政治、経済、社会問題やその隠された実態に果敢に挑み、数々の事実を暴き、紹介してきました。

James Risen はそうした記者の1人として、同紙で国家機密、公安問題を担当してきたベテランです。

彼は、2001年9月11日の同時多発テロ事件を調査し、カバーした記者として、Pulitzer Prize (ピューリッツァ賞) を受賞したことでも知られています。

ピューリッツァ賞は、19世紀末のニューヨークのメディア界の大物ジョセフ・ピューリッツァの遺志で設立され、優秀な報道などに贈られる賞であることはいうまでもありません。

そんな James Risen が、2006年に出版した State of War という書籍は、2001年9月11日の同時多発テロ事件以降のアメリカの諜報活動、特に CIA や NSA などによる活動の実態と、当時のブッシュ政権の involvement (関わり方) を赤裸々に暴いた書籍として、注目されたのです。

この取材活動の中で Risen は、イランでの核実験問題、さらには様々な中東問題などに絡み、アメリカの諜報機関のエージェントとして働く人物にも極秘の取材をいれ、さらに政府高官からも情報も入手します。

そして、agent すなわち工作員がいかに活動し、時にはそうした人々の中に double agent (二重スパイ) が存在していること、国家の利益を優先するという緊張の中で、ブッシュ政権の関係者がいかに Zone of Deniability (黙秘の枠) を設定して、拷問や個人情報などへのアクセスを極秘に行っていたかという内情が記されたのです。

さらに、本書は、諜報機関と政権自身との微妙な関係についても解説しています。

例えば、CIA がイラクと開戦する直前に、イラク政府は核を保有していないという overwhelming evidence (確実な情報) をキャッチしながら、それを敢えてブッシュ大統領に報告しなかった事実などがその代表といえましょう。

諜報機関が自らの政府をも操る実態がそこにみえてくるのです。

問題は、彼がこのような大掛かりでプロフェッショナルな取材を行うにあたってコンタクトした人物とのコミュニケーションが、政府に傍受されていたことです。

そして、それが証拠の一として Jeffrey Alexander Sterling という CIA の職員が逮捕され、国家機密の漏洩事件として裁かれているのです。

Sterling は CIA において、対イランへの諜報活動に関わり、ドイツやニューヨークでイランへの工作員のリクルートにもあたっていました。

しかし、彼は雇用関係への不満からCIAの中で雇用機会均等法に関する告発を行い、その後 CIA を解雇されます。

しかし、Sterling はそれを不服として、CIA を提訴していたのです。

恐らくこうした状況におかれた Sterling は、絶好の取材源の1人だったのかもしれません。

これは、最近話題のスノーデン事件とも微妙にリンクするケースであるといえましょう。

このケースの審理にあたって、裁判所は召喚状を James Risen に送り、証言を求めます。

しかも、この召喚状は、それに応じないときは刑事罰が課せられるという規定に基づいていました。

しかし、Risen は証言によって、様々な取材源が暴かれることになるとして、報道の自由の立場から出廷が拒否。召還の違法性を主張したのです。

それに対して、最高裁判所が、Risen の appeal (上告) を棄却したことが今回のヘッドラインの背景なのです。

James Risen に実際に刑事罰を課すかどうかは、オバマ政権の判断次第で微妙なところといえそうです。

しかし、ここで提示されている課題は機密保持法などが制定されている日本にとっても他人事ではないのです。

アメリカや日本といった民主主義を基軸とする国家にとって、政府の暴走や独裁を防ぐためにも、freedom of the press「報道の自由」は、憲法にも規定された人々の重要な権利です。

そして、報道を自由に遂行するためには、取材した対象、すなわち identity of source (取材源) を秘匿する権利も保証されなければなりません。

そして、国家の利益と取材源の秘匿とは時として大きく対立することも事実なのです。

今回のアメリカの Supreme Court (最高裁判所) の判決は、そうした対立への一つの判断です。

最高裁判所の判事は終身制で、大統領が指名し、上院の過半数の同意をもって任命されることになっています。

従って、時の政権や議会が判事を任命するときは、偏った判断がなされないか全米が注目します。

現在、民主党政権時に任命された判事は4名、共和党政権時の判事が5名で、いわゆる保守系がマジョリティとなっています。

これも今回の判断の背景として知っておきたい事実です。


バックナンバー(山久瀬洋二ブログ)

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 2.Twitterえーわー!

毎日、英語と日本語で同じことをつぶやいてます。
間違いやすい英話や異文化コミュケーションのコツをお伝えしています。
中でもリツイートやお気に入りの多かったtweetをご紹介します。

【英語tweet】

To stimulate westerners’ motivation, emphasize the opportunity and benefit before pointing out challenging barrier and difficulties.

【日本語tweet】

日本人は完璧であろうとしすぎるあまり、最初に困難なポイントやリスク、あるいは問題点を強調しがち。もし欧米の人を説得したいなら、まずはそうすることのベネフィットとチャンスをかたることから始める方が効果的です。


山久瀬洋二twitter はこちら

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 3.山久瀬洋二お薦めの一冊

今週のお薦めは、

「リーン・スタートアップ」

です。

シリコンバレー発の注目のマネジメント手法『リーン・スタートアップ』とは、新しい製品やサービスを開発する際に、作り手の思い込みによって顧客にとって価値のないものを作ってしまうことに伴う、時間、労力、資源、情熱のムダをなくし、時代が求める製品・サービスを、より早く生みだし続けるための方法論です。

■新しいことを始める人すべてが起業家

著者自身が、起業で失敗を重ねる過程で得た考え方ですが、それは会社を興す人にかぎらず、企業や組織のなかであっても新しい事業を始めようとする人にも役立ちます。本書のなかでも、「スタートアップとは、不確実な状態で新しい製品やサービスを創り出さなければならない人的組織であり、そこで働く人は皆アントレプレナー(起業家)である」と語っています。

■「構築―計測―学習」のフィードバックループ

リーン・スタートアップは具体的には、「構築―計測―学習」のフィードバックループを通して、まず要となる仮説に基づいて実用最小限の製品(MVP)をすぐに作って、実際に顧客に使ってもらった実験結果から、成長につながる価値を学ぶ(検証による学び)という工程をくり返します。 その中で、仮説に対して結果が違ったら、そのまま進むか、あるいは方向転換(ピボット)するかを選びます。その判断基準も、いっときの成果ではなく、事業として継続できるかどうかを見る、著者ならではの鋭い指摘が示されています。

■リーン・スタートアップの本質は、不確実で先が読めない時代への挑戦

本書の中でたびたび登場する言葉が「不確実な状況」であり「価値」です。著者はロケットの発射のように綿密な計画を立て、わずかでも仮説が間違っていたために悲惨な結果を招くよりも、自動車の運転のように状況に応じで進路を変えながら進んでいく操縦法が起業においては重要であると説きます。先の見えない不確実ないまの時代、失敗をくり返さなければすばらしい新製品は開発できず、価値を正しく見極め、失敗をムダにしないためのアプローチがリーン・スタートアップです。

リーン・スタートアップ
著者:エリック・リース
解説:伊藤 穣一(MITメディアラボ所長)
翻訳:井口 耕二
価格:1,944円


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今回は、ここまでです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
今週の「心をつなぐ英会話メルマガ」如何でしたか?

皆様のご意見・ご感想、ご質問・ご批判、お待ちしています。

See you next week !
また、読んでくださいねー。
さよならー。

発行者 山久瀬洋二
公式ブログ http://yamakuseyoji.com/
ご意見・ご感想等、お待ちしてます。
Email yamakuseyoji@gmail.com

山久瀬洋二の執筆活動

・異文化摩擦を解消する英語ビジネスコミュニケーション術

・英語で聞く世界を変えた女性のことば

・日本人が誤解される100の言動

・英語で読むスティーブ・ジョブズ

・気がつけばバイリンガル 英語日和

他多数


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