2015年7月28日火曜日

平和教育を考える。ポツダム宣言と戦争被害

こころをつなぐ英会話メルマガ

今日の目次です。

1.ニュースなイングリッシュ
~平和教育を考える。ポツダム宣言と戦争被害~

2.Twitterえーわー!
二カ国語で同じ意味を同時tweet!

3.山久瀬洋二お薦めの一冊
~英語のあたらしい読みかた~

では、始まりです。

 1. ニュースなイングリッシュ

海外のメディアで報じられたニュースを解説します。日本のマスコミではあまり報じられない切り口で、本当はどういう意味で報じられているのかを私見を交えてお伝えします。

今週のテーマは、

「平和教育を考える。ポツダム宣言と戦争被害」

です。


【海外ニュース】



We call upon the government of Japan to proclaim now the unconditional surrender of all Japanese armed forces, and to provide proper and adequate assurances of their good faith in such action. The alternative for Japan is prompt and utter destruction.

訳:我々は日本国政府が全日本軍の無条件降伏を宣言し、それを実施する適切な保証と制約を与えることを求む。この宣言を受け入れないときは、日本国に対して迅速かつ完全なる破壊が行われることになるであろう(ポツダム宣言第13条より)


【ニュース解説】

1945年7月26日にアメリカ合衆国、イギリス、そして中国によって日本に対して公布されたポツダム宣言 Potsdam Declaration の最後の部分の文章がこれにあたります。

この宣言には、日本の武装解除の他に、民主的な国家を樹立するための戦勝国の占領、戦争犯罪人の処罰、戦後の日本の領土が本州、九州、四国、北海道の4島と、その周辺の島々に限定されることなどが記されています。

この宣言にはまだソ連は含まれていません。この時点でソ連は日ソ中立条約によってポツダム宣言への参加を遅らせていたのです。

アメリカ、イギリス、そして中国は、対日戦争で大きな犠牲をはらってきました。

日本側が主張する本土決戦に及んだときの彼らが被りかねない甚大な被害、その後ソ連が対日戦争に加わったときの、日本への影響などを考え、日本側が迅速にこの宣言を受け入れることを強く期待していたのです。

それは、これら3国に加え、日本にとってもこれ以上犠牲を増やさず、戦後懸念されていた資本主義社会と共産主義社会による国際政治の狭間に日本を放り込まないために必要な宣言だったのです。

従って、ポツダム宣言の最初に、

Japan shall be given an opportunity to end this war
(日本がこの戦争を終結させるための機会を与える)

と記し、交戦国の一方的な攻撃と占領ではなく、日本側の自発的な戦争終結の機会があることを明記しているのです。

しかし、日本政府がこの宣言を黙殺したことは広く知られている事実です。

そして、その11日後にポツダム宣言で警告された通り、日本に原爆が落とされることになり、さらにソ連も参戦してくることになりました。

アメリカなどで、原爆投下の是非を問う時、このポツダム宣言を無視した日本政府の責任が問いただされているのには、そうした背景があるのです。

夏になると、平和教育の名の下に、戦争の悲惨さを子供達に教える様々な試みがなされています。

特に沖縄や原爆投下などにより、どれだけ戦火の苦しみを味わったか、お年寄りなどの証言が語られます。

そのことは、これからも是非続けて欲しい大切な活動です。

ただ、例えば原爆投下などの悲劇が、世界に率直に受け入れられない現実の背景に何があるのかを、我々はこのポツダム宣言を巡る歴史の中からみてゆく必要はないでしょうか。

つまり、日本政府がポツダム宣言の受諾を逡巡していた結果が、その後の戦災へと直接影響を与えている事実を知るべきなのです。

また、日本人が自らの戦災の悲惨さを語るとき、その戦争がどのようにしておこり、日本の戦争行為によって海外にどのような被害があったかを語り継ぐ努力はしているのでしょうか。

日本人が受けた戦災と共に、海外に向けたこうした視点、そして戦争によって日本が加害者になったことによる災禍が語られない限り、日本人の戦争教育は、自分だけの苦しみを強調する独りよがりの教育だと、海外での冷たい視線にさらされるのではと危惧するのです。

栃木県那須に千振(ちふり)農場があります。

この農場は、8月9日に日ソ中立条約を破棄して、ソ連がポツダム宣言に加担する形ではじまった戦争によって、当時の満州(中国東北地方)から罹災してきた人々が帰国し開拓した農場です。

彼らの知人や家族の多くが、中国で命を落とし、ソ連軍に長きにわたって抑留され、極寒のシベリアでの重労働に苦しみます。

この事例のように、ポツダム宣言を受諾しなかった結果、多くの人々の命が奪われたケースは数限りなくあるのです。

そんな日本人が被った被害を、第二次世界大戦という世界レベルの戦争の中での一コマであるという冷静な視点が必要です。

そして、他者への同情と洞察の姿勢を日本人が平和教育の中に取り入れたとき、はじめて周辺国を含む多くの国が、日本の平和教育の真価を認めるようになるのではないでしょうか。


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 2.Twitterえーわー!

毎日、英語と日本語で同じことをつぶやいてます。
間違いやすい英話や異文化コミュケーションのコツをお伝えしています。
中でもリツイートやお気に入りの多かったtweetをご紹介します。

【英語tweet】

Don’t say negative factor from the beginning. Consider creating win-win environment. Without motivation, nothing can be produced.

【日本語tweet】

日本人はとかく問題点を指摘することからビジネスの会話をすすめがち。海外の人が日本人が最もよく使う表現としてあげるのが、It is difficult. 相手はこれでモチベーションを下げてしまい、話が進まなくなります。ウインウインな状況を模索したソリューションの提案をするべきです。


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 3.山久瀬洋二お薦めの一冊

今週のお薦めは、

「英語のあたらしい読みかた」

です。

多方面で活躍中の著者が提唱する、楽しく続けられるリーディング学習法。

「読む」というインプットをアウトプットに直結させる、今までになかった読み方。

留学も海外駐在経験も、ましてや外国人と話したことすら無かった著者が、4年間で英語を仕事にするまでに至った試行錯誤の末に辿り着いた学習法を伝授。

英語力全般の向上のため、リーディングを最大限に活かす学習法「アクティブリーディング」の実践方法を、ラダーシリーズを使って徹底解説します。

『英語ができるようになったらどんな景色が見えるんだろう。日本語しか知らなかった自分の世界はどう変わるんだろう。どんなことを体験でき、どんな自分になれるんだろう。』(著者まえがきより)

英語のあたらしい読みかた
著者:セレン
価格:1,296円


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今回は、ここまでです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
今週の「心をつなぐ英会話メルマガ」如何でしたか?

皆様のご意見・ご感想、ご質問・ご批判、お待ちしています。

See you next week !
また、読んでくださいねー。
さよならー。

発行者 山久瀬洋二
公式ブログ http://yamakuseyoji.com/
ご意見・ご感想等、お待ちしてます。
Email yamakuseyoji@gmail.com

山久瀬洋二お薦めの書籍

・対訳 TOKYO CITY GUIDE 観光客をもてなす極上のスポット

・留学の真実

・日英対訳 アメリカ医療ハンドブック

・1日10分 超音読レッスン「世界の名スピーチ編」【CD付】

・日本の酒 SAKE【日英対訳】


いします。
http://www.mag2.com/m/0001604656.html

2015年7月21日火曜日

『カポエイラ』から広がる世界を見詰めて

こころをつなぐ英会話メルマガ
今日の目次です。

1.『カポエイラ』から広がる世界を見詰めて

2.Twitterえーわー!
二カ国語で同じ意味を同時tweet!

3.山久瀬洋二お薦めの一冊
~日英対訳 世界が驚いた重大事件 トップ20~

では、始まりです。

 1. 『カポエイラ』から広がる世界を見詰めて



ある子供のはなしです。

その子は、三重県のある街に住む小学校6年生。

今、ブラジルの古武道カポエイラに熱中しています。

カポエイラの起源には諸説あって、アフリカから連れてこられた奴隷にその源流をみる人もいれば、南米のインディオの間にあった武術にその起源をみる人もいます。

おそらくこれらの要素が融合し、今のカポエイラがあるのかもしれません。

しかし、共通していることは、その基本のステップであるシンガが、ブラジル音楽のサンバの動きに通じるなど、カポエイラをみると、そこから南米の様々な音楽、ダンス、そしてパフォーミングアードへと変化した体の動きをみることができることです。

それは、差別や迫害で手を縛られていたインディオやアフリカ系の奴隷達が、その制約の中で体を動かし、護身術を体得していったことから育った武道なのです。

話は飛びますが、中国に太極拳があることは、ご存知の通りです。

太極拳の型は、元々少林寺で産まれた少林拳に由来するときいていますが、私も詳しいことはわかりません。

ただ、徒手で戦うという制約の中から発展した武術が、今では太極拳を通して呼吸法や健康法、ひいては中国文化にある気の考え方に基づいたリズムや流れへと受け継がれていることは周知の事実です。

カポエイラも中国や東アジアの拳法も、制約や束縛から発展した武術なのです。

中国の武道が徒手という制約から発展したとするならば、カポエイラは手の拘束から足の動きを重点に発展した武道なのです。

制約や束縛が、文化活動へと発展した事例は他にも多くあります。

例えば、アメリカでは、黒人奴隷が文字を読めないという制約の中から、聖書をリズムやメロディにのせて学んだことがブルースを生み、ジャズへと発展しました。

制約や束縛が人の動きを純化し、そこで培われた型が、今度は自由に音楽や舞踏などに、更に芸術全般にまで影響を与えていったことを考えると、そこに人間の歴史の悲しくも複雑で、したたかなエネルギーを感じ取れます。

私がなぜこのようなことを書いているかというと、それにはわけがあります。

知人の子供が今カポエイラを学んでいるとき、その子はおそらくその動きや格闘術のかっこよさに魅了されているのかもしれません。

また、その地域で生活するブラジル系の友人との交流の楽しさがその背景にあるのかもしれません。

そして、その子が学んでいるカポエイラから広がる世界の広さは、ここに解説した通り、南米全般の文化へと拡大し、さらにグローバルな文化史への共通項へとつながるのです。

そうした領域までその子が可能性を広げ、好奇心を持ち続けられるかは、本人の今後の課題でしょう。

しかし、我々はともすれば、一つのことを見詰めたとき、その背景に思わぬ世界が広がり、そこにその時は見えてこない可能性が拓けていることに気付かないものです。

その子は今親と共にカポエイラに没頭しています。

親はこの活動を通して、子供にここで解説したような可能性を与え、同時にそこに住むブラジル系の人々との交流を通して、地域活動とグローバルな世界とをリンクさせることができます。

そして、子供はそれを体験することで、将来の人格形成に広がりを持たせることができます。

日本のいわゆる詰め込み教育が、こうした可能性を潰さないことを祈るばかりです。

むしろ、その子がこれから学ぶ社会科や歴史、英語や音楽の授業の中で、ただ、年代や都市名、英単語を暗記する無駄な作業に注力するではなく、カポエイラから広がる世界をそこでの知識とリンクできるようになればしめたものです。

今年の5月に仕事で南米のペルーを旅しました。

ペルーはインディオの文化が色濃く残る国として知られています。

いうまでもなく、インディオの文化の中には、被征服民族として混血が進み、従来の宗教や文化と、後年半ば強制されたキリスト教文化が混ざり合って共存しています。

このブラジルの隣国ペルーの文化も、カポエイラの発展とは無縁でないという人もいるのです。

カポエイラも制約と束縛の上に、ペルーにみられたような混合という要素が絡まった、ユニークな武道として今に至っているのです。

三重県でカポエイラに没頭する小学校6年生の子が、この古武道を通して、世界の有様を知ってゆくためのフックができることを祈りたいと思います。


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 2.Twitterえーわー!

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【英語tweet】

I like to use “Hi” instead of “Dear” in the email communication if you know your counterpart. It is casual and friendly.

【日本語tweet】

メールの書き出しに、Dear Mr. Johnsonと書く人がいます。ビジネスの相手でも、相手がファーストネームで署名をしてきたら、ファーストネームで呼びかけた方が打ち解けます。Dearの代わりに積極的にHi Alex と気軽に語りかければ、メールのやりとりが活き活きしてきます。


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 3.山久瀬洋二お薦めの一冊

今週のお薦めは、

「日英対訳 世界が驚いた重大事件 トップ20」

です。

事実は小説よりも奇なり

ラダーシリーズ(多読による効果的な英語学習をするためのシリーズです。)の人気タイトルが対訳になりました。

迷宮入りの切り裂きジャック事件、犯罪世界のロミオとジュリエット、イギリス王位をかけた恋、アポロ13号の奇跡の生還、未曾有の原子力事故、9.11のアメリカ同時多発テロなど、長い歴史の中で世界を揺るがした事件や事故、歴史的出来事の中から20話を厳選。

誰もが耳にしたことのある事件の内容、知っておくべき事件の真相を読みやすい英語と対訳で学べます。

日英対訳 世界が驚いた重大事件 トップ20
著者:ニーナ・ウェグナー
翻訳:平 湊音
価格:1,620円


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今回は、ここまでです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
今週の「心をつなぐ英会話メルマガ」如何でしたか?

皆様のご意見・ご感想、ご質問・ご批判、お待ちしています。

See you next week !
また、読んでくださいねー。
さよならー。

発行者 山久瀬洋二
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ご意見・ご感想等、お待ちしてます。
Email yamakuseyoji@gmail.com

山久瀬洋二お薦めの書籍

・対訳 TOKYO CITY GUIDE 観光客をもてなす極上のスポット

・留学の真実

・日英対訳 アメリカ医療ハンドブック

・1日10分 超音読レッスン「世界の名スピーチ編」【CD付】

・日本の酒 SAKE【日英対訳】


2015年7月14日火曜日

日本が必要としている古典的なコンセプト Rust to Riches

こころをつなぐ英会話メルマガ
今日の目次です。

1.ニュースなイングリッシュ
~日本が必要としている古典的なコンセプト Rust to Riches~

2.Twitterえーわー!
二カ国語で同じ意味を同時tweet!

3.英語で一言
~“See you at the station.”は正しい英語?~

4.山久瀬洋二お薦めの一冊
~能面の神秘~

では、始まりです。

 1. ニュースなイングリッシュ

海外のメディアで報じられたニュースを解説します。日本のマスコミではあまり報じられない切り口で、本当はどういう意味で報じられているのかを私見を交えてお伝えします。

今週のテーマは、

「日本が必要としている古典的なコンセプトRust to Riches」

です。


【海外ニュース】



Using historical principles and the willingness to use capital money to rebuild older factories into efficient production units ( just as the United States helped Western Europe and Japan get on their feet after World War II ), a strong economy can be achieved. 

訳:アメリカが第二次世界大戦後に西ヨーロッパや日本の復興に力を貸したように、歴史の真理に従い、古くなった工場を効率の良い製造ラインへと再生させるべく投資すれば、強い経済力を創造することができるはずだ

(Library Journalより)


【ニュース解説】

アメリカで骨董品店などの広告に rust to riches という言葉がよく使用されます。

これは、クラシックカーを磨き上げて、その価値を高めて販売したりすることから、錆び付いたものを安く買って、手入れをして高く売ることを意味する言葉です。

まだ日本がバブルに浮かれていた25年前、この言葉をタイトルとして使用した一冊の本がアメリカで出版され、話題になりました。

その本の副題は、
The Coming of the Second Industrial Revolution
「第二の産業革命の到来」。

それは、当時問題になっていた、アメリカ産業の空洞化と、その結果としての輸入超過を分析した書籍でした。

アメリカ経済界が不動産や海外からの輸入商品を販売するアウトレットやショッピングモールなどに投資をしたことが、国自体が輸入超過に苛まれている原因だとして、それを克服するためには国内の物造りへの投資が必要だという、言ってみれば極めて単純な論旨がそこで語られていたのです。

しかし、そこで分析されていることがらを冷静に見詰めると、今の日本が置かれている状況があぶり出されてきます。

著者は、例えば工場などでの設備投資が不十分であることから、アメリカの製造業の質自体が衰え錆び付いてしまったことを指摘し、そうした機械や技術そのものへの投資によって、アメリカ経済はしっかり再生されるはずだと指摘したのです。

この書籍が出版された80年代終盤、日本は「Riches」の頂点にあり、アメリカそのものを呑み込む勢いで、経済成長を遂げていました。 もうアメリカの時代は終わった、これからは日本の時代だと誰もが思っていたはずです。

ところが、その直後にバブルがはじけ、日本は暗黒の10年と呼ばれる低迷期にはいってしまいます。

逆にアメリカは、シリコンバレーなどに代表する先端技術への投資によって、錆び付いた経済が快復し、まさに Rust to Riches を具現化していったのです。

その後ITバブルは一度崩壊したものの、そこで培われた技術が、今世界の標準になろうとしていることはいうまでもありません。

Rust to Riches は歴史的な教訓です。

例えば、20世紀は、ヨーロッパやアジアといった旧大陸が疲弊した時代でした。ヨーロッパは2度の世界大戦で、アジアは旧体制から抜け出せないままに、列強の植民地化の脅威に晒されて、共に疲弊していました。

つまり、20世紀の旧大陸は Rust だったのです。

その時代の例外が第二次世界大戦では躓いたものの、国家制度の近代化と欧米からの技術投入を迅速に行った日本でした。

日本は江戸時代末期から Rust to Riches への道標に沿った走行をはじめたのでした。

そして今、アジアでは多くの国がこの Rust to Riches のマイルストーンに沿って、成長を続けています。

そのことによって相対的に日本は突出できなくなり、家電産業など一部では Riches to Rust という、言葉を換えれば「繁栄から衰退」への脅威に晒されているのです。

問題は、錆び付いたときに、それをいかに Rust to Riches の軌道に転換させるかです。

これを誤ると、日本は壮大な歴史のサイクルの中での「栄枯盛衰」の渦にのまれてしまいます。

以前この渦に呑み込まれたのが中国でした。

中国は18世紀に国力の頂点を迎え、その後 Rust へ向け下降し、国家を Rust to Riches の軌道に乗せるまで100年以上の苦難に晒されました。

そうした兆候がないか冷静に見詰めてゆく姿勢が日本には必要です。

例えば、日本経済を牽引しているとされる自動車業界に目を向けてみます。

そこでは大手メーカーの部品調達先が国産ではなく、海外へと拡散をはじめている現状が浮き彫りにされてきます。

日本の底力とされる物造りの技術が衰退し、日本の製品ではなく海外の部品を調達しなければ車の製造ができなくなってきているのです。

系列そのものが内部から腐食しはじめ、正に空洞化の兆しが顕著になっているのです。

「物造りの日本」と政府やマスコミが我々に吹き込んでいる情報が、単なるプロパガンダになろうとしていることに、海外で指摘する人は多いものの、日本国内ではそれほど問題にはなっていないようです。

島国の中でのガラパゴス化によって、目隠しをされている中、確実に日本の競争力が衰退していることは、海外に一歩出て冷静に状況をみればすぐにわかることです。

こうした事実を把握することが、栄枯盛衰の100年サイクルに日本が陥らないかを見極める大きなバロメータとなるはすです。

「Globalization の波に乗り遅れるな」と今、英語教育改革をはじめとした様々な試みがなされようとしています。

そこで知っておきたいことは、この Rust to Riches の道標をしっかりと設定してゆくことです。

錆び付いている現状に絶望するのではなく、それをいかに磨いて復興させてゆくか。

たった25年前にその課題の深刻さを意識したアメリカ。

今は日本が、錆び付いている現状を把握しなければならない立場にたたされる番となっているのです。


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 2.Twitterえーわー!

毎日、英語と日本語で同じことをつぶやいてます。
間違いやすい英話や異文化コミュケーションのコツをお伝えしています。
中でもリツイートやお気に入りの多かったtweetをご紹介します。

【英語tweet】

To learn English conversation, learn the skill of interactive listening. Don’t just listen without a word. Return your reaction immediately.

【日本語tweet】

英会話は、聞くときも、ただ黙って聞くのではなく、わからない点を即座に確認したり、自分の意見をその場で表明したりと、相手にどんどん働きかけていかなければなりません。聞くということは、リアクションを相手に送るということと同義なのです。これをインターラクティブ・リスニングといいます。

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 3.英語で一言

今回のテーマは、

「“See you at the station.”は正しい英語?」

です。

この一言の中で使用されている前置詞が正しいかどうか。

日本の英語のテストでは、「駅で会いましょう」というこの文章で at か in かあるいは by かといった前置詞を列挙して、どれが正解ですかと聞いてくるはずです。そして大方は at が正解とするのでしょう。

この試験の最大の欠点は、英語でのコミュニケーションのノウハウを完全に無視して、言葉を直訳してリンクする前置詞だけを特定しようとしていることです。

「駅で」の「で」が、ピンポイントの場所を示すので正解は at となるというわけです。確かにその場合、それは正解かもしれせん。

しかしよく考えてみてください。 どこの誰が、広い駅をatとして捉えて、その場所で相手と実際に会うことができるのでしょうか。

例えば、現実の会話はこうなります。

まず、多くの人は駅で会うではなく、駅の中で待ち合わせます。

従って、

See you in the station.
「駅の中で会おうか」

Where?
「どこで」

Let’s see. I will wait for you beside the information counter in the concourse.
「そうだね。コンコースの中の案内のカウンタイーの横で待っているよ」

Good. See you at noon.
「そうしよう。ではお昼にね」

などという会話が成り立つはずです。

つまり、at となることも in となることもあれば、場合によっては in front of となることもあるのです。

どの前置詞でも正解なのです。

問題は、お互いに会話の中で、面会する場所についてより詳細に確認し合い、最終的には駅の中のどこで会うか、何時にあうかを確認する技術の方が遥かに大切なのです。

この会話のプロセスを練習することを学ぶ方が、「が」を at とリンクさせるより役に立つどころか、そもそも、正解の前置詞を選ぶ事自体がナンセンスというわけです。

言語に正しい答えを求めることはテクニカルには可能です。

また、例えばそれぞれの前置詞の意味を把握することも大切でしょう。

しかし、そうした技術を身につけることがプライオリティとして重要かどうかには疑問が残ります。

まずは、いかに相手から情報を引き出し、そして自らに意見をいい、コミュニケーションを深めてゆくかという技術の方が、はるかに重要なのです。

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 4.山久瀬洋二お薦めの一冊

今週のお薦めは、

「能面の神秘」

です。

能楽の空気感までも伝える迫力の写真集

第一線で活躍するシテ方能楽師が、半世紀に及ぶキャリアの中で生みだしてきた能面32点を、ダイナミックな構成のカラー写真と日英対訳文で紹介。

能面が作り出す繊細な陰影まで、フルカラーで忠実に再現。さらに、能の歴史や上演形式、能面制作の手順の解説も充実。

UNESCO世界無形遺産として国際的にも高い芸術性が認められた能楽を世界に紹介する一冊です。

日英対訳 能面の神秘
The Secrets of Noh Masks

著者:宇高 通成 (うだか みちしげ)

シテ方金剛流能楽師。1947年生。重要無形文化財総合指定保特者。12歳で内弟子として金剛宗家・二世金剛巌師に師事。これまでに「翁」、「道成寺」、「卒都婆小町」、「木賊」、「鸚鵡小町」などを披く。1985年国際能楽研究会 (INI) 創立。能楽師にて唯一人の能面作家として面乃会を主宰、自作の能面を自らの舞台において使用するという新境地を拓く。日本能楽会会員。

写真:山形 秀一(やまがた しゅういち)

1953年京都生まれ。広告を中心に人物、風景、天体まで幅広い守備範囲を持つ写真家。

価格:3,672円


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今回は、ここまでです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
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山久瀬洋二お薦めの書籍

・対訳 TOKYO CITY GUIDE 観光客をもてなす極上のスポット

・HEALING SPEECH ヒーリング・スピーチ

・留学の真実

・BUSHIDO The Soul of Japan 英文版武士道

・DISCOVERING KYOTO IN TEMPLES AND SHRINES 対訳 京都の寺社


2015年7月7日火曜日

トヨタ女性役員辞任に思うこと

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今日の目次です。

1.ニュースなイングリッシュ
~トヨタ女性役員辞任に思うこと~

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3.山久瀬洋二お薦めの一冊
~シリコンバレーの英語~

では、始まりです。

 1. ニュースなイングリッシュ

海外のメディアで報じられたニュースを解説します。日本のマスコミではあまり報じられない切り口で、本当はどういう意味で報じられているのかを私見を交えてお伝えします。

今週のテーマは、

「トヨタ女性役員辞任に思うこと」

です。


【海外ニュース】



Toyota Motor Corp. said Wednesday its first female managing officer Julie Hamp has resigned after being arrested last month for allegedly importing a narcotic painkiller to Japan.

訳:トヨタ自動車は水曜日に、初めて女性の役員として登用されたジュリー・ハンプス氏が、先月日本に痛み止めの麻薬を持ち込んだとして逮捕されたことを受け、辞任したことを発表(CNNより)


【ニュース解説】

トヨタ自動車にとって、初の女性役員として脚光を浴びていたジュリー・ハンプス氏が薬物取締法容疑で逮捕されたことは、日本でも大きく報道されました。

この問題、彼女が日本の法律を破っているという認識がどれだけあったのか、疑問が残ります。

国によって、法律は異なります。

例えば、日本では麻薬取締法に抵触すると、懲役刑となる可能性はありますが、同じ先進国であるシンガポールでは、場合によっては死刑事案として裁判にかけられます。

薬物も、ある国では認可されている薬物が他の国では認可されていないということはよくあることです。

今回のケースの場合、アメリカでは比較的自由に使用が認められている鎮痛剤を、医療上の特別な許可なく使用することが認められていない日本での使用を目的として、日本に持ち込もうとしたということが、ハンプス氏のトヨタ自動車の役員としての命取りとなったわけです。

法律はそれぞれの国の主権の中で尊重されなければなりません。

これくらいはと安易な気持ちでなした行為が、海外では大きな問題となるケースは枚挙に暇がないのです。

トヨタ自動車のケースでいうならば、2006年に和解が成立したトヨタアメリカの日本人社長に対しておこされたセクハラ訴訟を思い出します。

この訴訟は、被害者はアメリカ在住の日本人でした。

「社長の大高さんは脇が甘かったんですよ。このセクハラ事件、当時は日本だったら許されていた程度のことだった。相手が日本人の女性だったとはいえ、アメリカで生活していてアメリカの常識の中で生きている人に、彼の行為はセクハラに映ったのです」

当時、米国のトヨタ自動車に勤めていたある社員はこう私に語っていました。

事実とその背景はともあれ、確かにアメリカではセクハラに対する会社や経営者のリスクは、日本とは比べものにならない程大きなものであるといえましょう。

つまり、その社員の言葉を借りるならば、日本の常識と日本の尺度で判断した行為が、海外では厳しく罰せられたということになります。

誤解を避けるためにいうならば、セクハラが良いとか悪いということではなく、被害者も加害者も、何をセクハラと感じ、判断するかという基準が文化や国によって異なるのです。

ここで知っておきたいのは、異文化での universal なアプローチと situational なアプローチへの発想です。

universal なアプローチとは、常識や判断が文化を越えて世界のどこでも通用するべきだという思いを意味し、situational のアプローチとは、状況によって柔軟に判断して、対応ができると判断することを意味します。

トヨタ自動車を結果として辞任したジュリー・ハンプス氏も、米国トヨタ自動車の社長を辞任した大高英昭氏も、この異文化、そしてグローバルな環境で業務をしてゆく上でのこの二つの概念の使い分けを誤ったのではないでしょうか。

アメリカで合法なドラッグを日本に持ってきてなにが悪いという universal な発想によって、日本で逮捕されたジュリー・ハンプス氏。

アメリカではセクハラ問題には気を付けなければと知りつつも、日本人同士であれば多少こうしたことにも寛容であってよいのではと situational な判断によって高額な損害賠償訴訟の原因を造った大高氏。

法を冒すことへのリスクに関する甘い認識も、こうした判断ミスへとつながったのかもしれません。

これは企業が多様な世界の文化を越えてグローバルに活動をする上で最も繊細でかつ看過できないテーマといえましょう。

ここを見誤ると、異文化の落とし穴によって、経営陣の犯罪行為やスキャンダルにまで発展してしまうのです。

国際企業のコンプライアンス上の課題を投げかけた、今回の役員辞任劇。

とにもかくにも、日本を代表する企業として海外から初めて女性の役員を招聘した結末としては、極めて残念なことであったといえましょう。


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中でもリツイートやお気に入りの多かったtweetをご紹介します。

【英語tweet】

I think “because” is indispensable word in English communication. It features the logic to support what people want to say.

【日本語tweet】

英語で何かを話すとき、言いたいことを喋ったあとにbecauseと続けるくせをつけましょう。Becauseは英語で最も大切な言葉です。あとの部分がしっかり説明できれば、明解にこちらの意図が伝わります。ポイントを先に述べ、理由をしっかり話す方法は、英語での説得術、説明術の基本です。


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 3.山久瀬洋二お薦めの一冊

今週のお薦めは、

「シリコンバレーの英語:スタートアップ天国のしくみ」

です。

排他的で閉鎖的。世界が注目するシリコンバレーの奇妙な英語とは?!

アップル、グーグル、フェイスブックなどの名だたるインターネット企業が本社を置く場所としても知られ、IT企業の一大拠点となっているシリコンバレー。

そんな世界中が注目する場所で生き抜くために必要な100のキーワードを徹底解説!!

世界で活躍するために最先端の英語を身につけよう。

シリコンバレーでエンジニアやITべンチャーを目指す人はもちろん、世界最先端の企業が集う場所で使われる英語に興味のある人におすすめです。


以下、「はじめに」より

シリコンバレーを初めて訪れる人々の多くが、たとえそれが英語を母国語とする人々であっても、ここで使われている言葉に困惑を感じています。

(中略)シリコンバレーは特殊な用語を持つ排他的で閉鎖的な地域として人々の目に映っているといってよいでしょう。

それにもかかわらず、この地域が誇る成功のおかげで、シリコンバレーとその文化には非常に高い関心が向けられています。

政府の支援を受けたトップダウンと起業家精神を発揮しようとする個人のボトムアップの両方のアプローチで、世界中がシリコンバレーの成功に見習おうとしています。

さらに、日本を含めた外国を拠点とする企業の多くが、大小様々なシリコンバレーの企業およびこの地を基盤とする大学などの機関と関係を結ぼうと努力しています。

シリコンバレーの英語 スタートアップ天国のしくみ
著者:ロッシェル・カップ
著者:スティーブン・ガンツ
価格:1,944円


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今回は、ここまでです。

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発行者 山久瀬洋二
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