では、始まりです。
海外のメディアで報じられたニュースを解説します。日本のマスコミではあまり報じられない切り口で、本当はどういう意味で報じられているのかを私見を交えてお伝えします。
今週のテーマは、
「アリババの成功物語から見えてくる日本の現実」
です。
【海外ニュース】
Alibaba valued at nearly $230bn as stock surges on NY opening
訳:ニューヨークでの公開で株価が高騰し、アリババの時価総額は2300億ドル近くとなる
(Financial Timesより)
【ニュース解説】
中国の電子商取引会社アリババAlibabaがニューヨーク証券取引所New York Stock Exchangeで公開し、記録的な高値をつけたことは、世界中の経済紙がそのトップで伝えています。
この記事が配信された後、さらに株価は上昇し、最終的には公開価格から38%上昇し、株価は93.89ドルをつけたということです。
アリババの創業者、ジャック・マーJack Ma氏は、同社のインタビューに対して、
Today what we got is not money. What we got is the trust from the people.
(今日我々が得たものは金ではない。我々が得たものは人々の信用なのだ)
と満面の笑顔で語っています。
アリババは、1999年に杭州にあるジャック・マーのアパートで創業したといいますから、たった15年でアメリカンドリームの本拠地ニューヨークで、「チャイニーズ・ドリーム」を勝ち取ったことになります。
そして、アリババの主要株主はソフトバンク、アメリカのヤフーであることから、これは名実共の世界企業のサクセスストーリーということにもなるのです。
私はこのニュース記事をソウルから東京への機内で読みました。
そもそも電子取引には素人の私からみても、この快挙がいかにすごいことかは容易に想像できます。
マー氏の経歴自体、面白いもので、彼は決してエリートではありませんでした。
1964年生まれの彼は、大学受験にも二度失敗し、自動車の運転手から身をおこし、英語を勉強しようと改めて高等教育に挑戦したと、その経歴には書かれています。
その後彼は、英語学習の基礎を活かし、大学で国際間の商取引などを学び、電子取引の会社を創業したのです。
そんな経歴を読んでいるとき、私はふとソウルでの商談を思い出しました。
韓国の場合、今多くの企業に入社するためには、英語で面接を受けなければならなりません。そして、そのための参考書や、コーチングが一つのビジネスになっているのです。
韓国のビジネス文化はなんといっても、まず動いて、時には極端に状況を変化させながら、新しい目標にチャレンジすることで知られています。
英語での面接の導入が急増していることも、そうした韓国のビジネス文化と無縁ではないはずです。
では日本ではどうでしょうか。
まず英語を勉強して、そこから新たなチャンスへチャレンジしようとしている人は世界に無数にいるはずです。
そして、日本も例外ではないはずです。
そうした時流のためもあり、私は、日本企業で何度も、海外とのビジネスコミュニケーションに関する研修などを手がけていますが、人事部の関係者の多くが、私に研修は日本語ですよねと何度も念を押します。
そして、英語を勉強することは必要なので、TOEICの点数を上げるための講師などを別途雇い、これまた、日本語でその傾向と対策を学習するのです。
従って、日本では相変わらず英語難民と呼ばれる人々の数は減らず、企業の中でも、そして一般社会でも、英語が大切だという意識は持ちながらも、世界に羽ばたく人材育成にはほど遠い状況にあることは否めません。
こうした日本の現状を考えたとき、果たして日本でマー氏のような人材が育成できるのかという疑問と将来への不安を感じてしまいます。
韓国最大企業であるサムソンでは、TOEICに偏重するあまり、受験テクニックだけを備え、実践の場での英語を使った交渉や商談のできない人材が増える弊害を憂い、自社独自の英語検定制度を導入しています。
そして、その動きは徐々に他の企業にも影響を与えていると、私と商談をした韓国人企業家は語ってくれました。
マー氏が育った中国は、韓国とはもちろん事情が異なります。
しかし、留学生や海外との人材交流の数を比較した場合、日本はその足下にも及んでいない事実を統計で突きつけられます。
ダイナミックに変化し、たった15年で世界企業が育成され、世界の商取引のあり方自体が変化する現在にあって、あまりにも変化に柔軟でなく、未だに受験偏重、実社会の現実とかけ離れた文部科学省の指針ばかりに目を向ける日本の英語教育の現場に危機感を覚えているのは、私だけではないはずです。
アリババのアメリカでの上場成功の背景には、そうした企業を興し、育てる人材を輩出できる社会があり、さらにそうした企業で働く人材のダイナミックな交流があるのだということを、我々は改めて認識する必要があるのです。
バックナンバー(山久瀬洋二ブログ)
●目次に戻る
毎日、英語と日本語で同じことをつぶやいてます。
間違いやすい英話や異文化コミュケーションのコツをお伝えしています。
中でもリツイートやお気に入りの多かったtweetをご紹介します。
【英語tweet】
Every culture has filter for people to evaluate & judge things. Japanese has it, too. Visit other culture to find countless various filters.
【日本語tweet】
世界に羽ばたく人は、新鮮な好奇心と柔軟性で海外の文化や事象に接して欲しいもの。日本だけで培われた知識によって、色眼鏡でものをみれば、全てがその色に染まってしまいます。そのままでは、日本で聞いていること、教えられたことと全く異なる事実やものの考え方に触れることができなくなります。
山久瀬洋二twitter はこちら
●目次に戻る
今回のテーマは、
「謝る文化、そうでない文化」
です。
アメリカに出張中、現地のビジネスパートナーから夕食に招待されました。
そこは太平洋に面したステーキハウスで、アメリカのレストランらしく、席に案内する人、ウエイター、料理を運んだりさげたりする人とちゃんと分業され、ダイニングは既に大勢のお客で賑やかでした。
まあ、その地域での高級レストランといっても差し支えありません。
予約していたテーブルに案内され、私はTボーンステーキ、招待してくれた夫婦も、私と共に招待された他の友人も、それぞれ同じような注文をウエイターにしたのです。
そこでのちっちゃなハプニングが、正に異文化を象徴した出来事として印象に残りました。
ウエイターが注文をとってしばらくして、料理が運ばれてきたときのことです。
ホストのビジネスパートナーが料理を持ってきた人にクレームをいいます。
「おいおい、僕のステーキ、ウエルダンでお願いしたはずだよ」
すると運んできた人は、
「おっと、そうだったの」
「そうだよ」
「じゃあ、もうちょっと熱を加えようか?」
「たのむよ」
「OK、安心しな」
「信頼してるぜ。頼んだよ」
こうした会話のあと、配膳係のおじさんは、そのステーキを持って、再びキッチンへ。
それをみていた、オーダーをとったウエイターが、
「どうしたんですか?」
それに対して、私のビジネスパートナーは、
「いやいや、肉がミディアムレアできたんだよ。だからまたやり直してもらったんだ」
「そうだったんですか」
こういって、二人はにこやかにジョークを交えて談笑します。
そんな一連のやりとりを横からみていて私は、心の中で思いました。
これが日本だったらどんな会話になっているかなと。
「ちょっと、ねえ。焼き方を頼んだはずだよ。ウエルダンだと」
「あ、そうでございますか。それは申し訳ありませんでした」
「困るなあ、ちゃんとオーダーを通してくれないと」
そこにウエイターが登場して、
「お客様、誠に申し訳ありません。すぐにウエルダンにしてお届けしますので」
「まあね。ちゃんとしてくれればいいんだけど」
「本当に申し訳ありません。ただいますぐに」
こんな会話になっていたのではないかと思うんです。
しかも、誰もが真面目な顔をして。
アメリカでの光景は、最初から最後までなごやかで、笑いすらありました。
しかもサービスを提供する側からも。
この意識の違いが、海外で仕事をするときに、思わぬ苛立や不快感を双方にもたらすのです。
謝ってほしい日本人と、「威張りくさって、なんだい、人をなんだと思っているんだ」と不快に思うこちらの人と。
しかも、日本人の多くはこうした対応をされると、いつものようにうまく謝ってもらえないので、どぎまぎして、クレームを和やかに話し合うことなどできません。
だから、だんだんとイライラして、最後はちょっと不快な顔をしたり、いきなり苛立ってみたり。
こうするとますます相手は意図が伝わらず誤解が深くなるばかり。
海外でクレームをつけたり、逆にクレームを受けたりするときの対応は、日本のそれと大きく異なります。
特に、欧米では、人と人とは対等という基本原則で話し合いますから、頭ごなしの怒り方は却って相手との溝を深めてしまうのです。
もちろん、ステーキをもってきたとき、その油が跳ねてお客の服を汚したりというどうしようもないミスがあったりしたときは、彼らも真摯に謝ります。
しかし、そんなときでも、お互いの対応の方法は、交渉であって、上下関係ではないのです。
レストランでの小さな出来事。そこに思わぬ異文化を、心の交差点での思いの違いをみたのでした。
●目次に戻る
今週のお薦めは、
「And Then There Were None
そして誰もいなくなった」
です。
孤島の洋館に集められた年齢も職業も異なる10人の男女。
招待主は姿を見せず、10人は嵐が襲う島から出られなくなってしまう。
やがて、館に伝わる童謡になぞらえた殺人が起こる。
誰かが殺されるたび、10体あった兵隊人形も一体ずつ消えていく。
一人、また一人と殺されて、ついには…。
ミステリーの女王、アガサ・クリスティーがラダーシリーズ(やさしい英語で書かれた多読用リーダー)に初登場!
著者:アガサ・クリスティー
価格:1,026円
●目次に戻る
今回は、ここまでです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今週の「心をつなぐ英会話メルマガ」如何でしたか?
皆様のご意見・ご感想、ご質問・ご批判、お待ちしています。
See you next week !
また、読んでくださいねー。
さよならー。
山久瀬洋二の執筆活動
・異文化摩擦を解消する英語ビジネスコミュニケーション術
・英語で聞く世界を変えた女性のことば
・日本人が誤解される100の言動
・英語で読むスティーブ・ジョブズ
・気がつけばバイリンガル 英語日和
他多数
|